◆SH2796◆証券取引等監視委員会、「日本調剤株式会社役員による重要事実に係る取引推奨行為に対する課徴金納付命令の勧告について」を公表 伊藤広樹(2019/09/26)
証券取引等監視委員会、「日本調剤株式会社役員による重要事実に
係る取引推奨行為に対する課徴金納付命令の勧告について」を公表
岩田合同法律事務所
弁護士 伊 藤 広 樹
証券取引等監視委員会は、2019年9月13日、「日本調剤株式会社役員による重要事実に係る取引推奨行為に対する課徴金納付命令の勧告について」において、日本調剤株式会社(以下「当社」という。)の役員による重要事実に係る取引推奨行為に関して、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った旨を公表した。
本稿では、本件で問題となった情報伝達・取引推奨規制の概要を解説するとともに、本件の事案の概要を紹介する。
1. 情報伝達・取引推奨規制の概要
金融商品取引法167条の2第1項は、概要、上場会社等の会社関係者であって、当該上場会社等の重要事実を職務等に関して知ったものは、他人に対し、当該重要事実の公表前に当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等をさせることにより当該他人に利益を得させ、又は当該他人の損失の発生を回避させる目的をもって、当該重要事実を伝達し、又は当該売買等をすることを勧めてはならないと定めており、これは一般に「情報伝達・取引推奨規制」と呼ばれている。
通常のインサイダー取引規制は、有価証券の売買等という取引行為を規制対象としているのに対して、情報伝達・取引推奨規制は、重要事実の伝達行為・売買等の推奨行為という、いわばインサイダー取引の準備行為を規制するものである。この点に関して、情報伝達・取引推奨規制の導入前において、インサイダー取引に向けた情報伝達行為等は、インサイダー取引の教唆犯又は幇助犯に該当し得るとされていたものの、直接の規制対象とはされていなかった。しかしながら、情報受領者によるインサイダー取引を防止する観点からは、不正な情報伝達行為等も規制すべきであるとして、2014年4月1日に施行された改正金融商品取引法において、情報伝達・取引推奨規制が導入されるに至った。
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(いとう・ひろき)
岩田合同法律事務所弁護士。2004年早稲田大学法学部卒業。2006年早稲田大学法科大学院修了。2007年弁護士登録。主にM&A取引、会社法を始めとするコーポレート分野に関するアドバイスを行う。著作には、『会社法実務解説』(共著 有斐閣 2011)、「新商事判例便覧」旬刊商事法務2031号~(共著 商事法務 2014~(連載))等。
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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