◆SH2688◆企業法務フロンティア「AIと知的財産権」 西本 強(2019/07/24)

企業法務フロンティア
AIと知的財産権

日比谷パーク法律事務所

弁護士 西 本   強

 

 AI(人工知能)の研究開発および実用化が進めば進むほど、AI自体が知的財産権の対象として保護されるのか、あるいは、AIが生み出したコンテンツ(AI生成物)が著作物として著作権の対象となるのかといった「AIと知的財産権」が問題となる。

 まず、前者の問題については、企業が莫大な投資をし、データを拠出してベンダにAI開発を委託し、完成したAI(学習済みモデル)を用いて新商品を開発し製造する場合、そのAIについては他社に利用させることなく独占的に利用したいというニーズが生じる。独占的な利用までは不要な場合でも、莫大な投資とデータを拠出して開発したものである以上、横展開する場合にはプロフィットシェアをすべきと考える企業も多いであろう。したがって、AI開発を行う企業にとって、そもそもAI(学習済みモデル)がどのような知的財産権によって保護されるのかについては、重要な関心事である。

 他方で、後者の問題については、例として「The Next Rembrandt」プロジェクトを考えると分かりやすい。これは、346点あるレンブラントのすべての作品を表面の凹凸に至るまで詳細にデータ化し、機械学習(ディープラーニング)させることによってレンブラントの絵画の特徴をすべて学習させたAIに絵画を描かせるというプロジェクトである。実際AIが描いた「新作」はレンブラント本人が描いたものと言っても誰も疑わないような出来映えである。このようにAIが新たに生み出したコンテンツが著作権の対象として保護されるのかが問題となる。

 ほかにも「AIと知的財産権」については様々な問題が存在するが、以下では、現在、AI開発の実務でも問題となっている「開発したAIはいかなる権利保護を受けうるのか」という前者の問題について若干の考察を加える。なお、本項では話を簡単にするために、AI(人工知能)=学習済みモデルという前提で論じる。

 

1 AI=学習済みモデルとは

 学習済みモデルといっても、定義が定まっているわけではなく、利用する者によって異なる意味を持つものとして使われることが多い。

 ここでは、知的財産戦略本部の「新たな情報財検討委員会報告書」(平成29年3月)等を踏まえ、学習済みモデルのことを「プログラムとパラメータ(係数)の組み合わせ」として表現される関数、つまり、学習済みパラメータが組み込まれたプログラム(推論プログラム。要するに計算式)のことを意味するものとして考える。

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(にしもと・つよし)

1999年 東京大学法学部卒業、2000年 弁護士登録、2006年 米国コロンビア大学ロースクール修士課程(LL.M.)修了、2007年 ニューヨーク州弁護士登録、2010年 日比谷パーク法律事務所パートナー。2019年3月 日本ディープラーニング協会のディープラーニングG検定取得。

日比谷パーク法律事務所 http://www.hibiyapark.net/

所属する弁護士がそれぞれコーポレートガバナンス等の会社法、M&A、特許法・著作権法等の知的財産権法、ファイナンス法、スポーツ法、システム開発を含むデジタル法、紛争処理などの得意分野に精通し、各分野のトップランナーとして「少数精鋭」と呼ばれるにふさわしいリーガル・サービスを提供するブティック型ファーム。

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