◆SH2675◆FTC v. Qualcomm独禁法判決がもたらす知財市場へのインパクト――FRAND実施料をめぐる問題の所在と残された課題(3) 池谷 誠(2019/07/18)

FTC v. Qualcomm独禁法判決がもたらす知財市場へのインパクト

FRAND実施料をめぐる問題の所在と残された課題(3)

デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社

マネージングディレクター 池 谷   誠

 

3. 解説

 3.1 旧秩序におけるEMVRの限界

 本件判決は主として反トラスト法上の問題をめぐるものであり、モデムチップ市場やスマートフォン市場での実務に多大な影響を与えうるものであるが、知財評価の観点からは、クアルコムの独占的地位を背景とする旧来の業界秩序の下での標準必須特許の実施料の考え方について、今後根本的な再考を促すという効果を含むものと考えられる。

 まず、ロイヤルティベースの論点について整理すると、本件裁判においては、クアルコムがOEMから、スマートフォン完成品価格をベースとする実施料を徴収していたことが明らかとなっている。一般に、実施料の算定において、完成品が多数の部品から構成されており、完成品メーカーがこれらの部品を外部のサプライヤーから購入することが可能な場合、完成品の価格をロイヤルティベースとする手法を全体市場価値法(EMVR: Entire Market Value Rule)という。一方、そのような部品の市場が完成品の市場とは別個に存在すると考えることができる場合、完成品ではなく、部品の価格をロイヤルティベースとする方法を、最小単位の市場を基礎とするという意味で最小販売可能特許実施単位(SSPPU: Smallest Salable Patent Practicing Unit)に基づく手法という。

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(いけや・まこと)

デロイト トーマツ ファイナンシャル アドバイザリー合同会社にて係争支援部門を統括。知的財産侵害に係る損害賠償請求訴訟(営業秘密不正使用事件、特許・商標侵害事件、半導体メーカー、光学機器メーカー等が係る従業員発明特許対価請求事件など)や株主間の係争、商取引に係る訴訟や国際仲裁等多数の大型事案において、裁判所に対して損害算定に係る専門家意見書や証言等を提供した経験を有するほか、係争的状況の下での知財権交渉に係るコンサルティング業務を提供している。

コロンビア大学国際関係学修士(国際金融・ビジネス専攻)、上智大学経済学部卒

著書等として「特許権侵害における損害賠償額の適正な評価に向けて」特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書、「論点詳解 係争事案における株式価値評価―日米の株式買取請求事件等のトレンドと考え方」中央経済社など。