◆SH2645◆改正独占禁止法が成立・公布される――課徴金減免制度の改正・課徴金の算定方法の見直し等(2019/07/03)
改正独占禁止法が成立・公布される
――課徴金減免制度の改正・課徴金の算定方法の見直し等――
「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律」が6月19日に成立し、6月26日に公布された(令和元年法律第45号)。改正法は、一部の規定を除き、公布の日から1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。
改正法案は、3月12日に閣議決定の上、国会に提出された(後掲の別稿参照)。衆議院では、経済産業委員会で5月29日、本会議で5月30日に可決。参議院では、6月18日に経済産業委員会、6月19日に本会議で可決・成立した。なお、衆参両院の委員会において、後掲の附帯決議が付されている。
今回の改正は、次のような内容となっている。
- ① 課徴金減免制度の改正
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減免申請による課徴金の減免に加えて、新たに事業者が事件の解明に資する資料の提出等をした場合に、公正取引委員会が課徴金の額を減額する仕組み(調査協力減算制度)を導入するとともに、減額対象事業者数の上限を廃止する。
- ② 課徴金の算定方法の見直し
- 課徴金の算定基礎の追加、算定期間の延長等課徴金の算定方法の見直しを行う。
- ③ 罰則規定の見直し
- 検査妨害等の罪に係る法人等に対する罰金の上限額の引上げ等を行う。
- ④ その他所要の改正を行う
また、公取委では、今回の法改正に併せて、いわゆる「弁護士・依頼者間秘匿特権」への対応として、「新たな課徴金減免制度をより機能させるとともに、外部の弁護士との相談に係る法的意見等についての秘密を実質的に保護し、適正手続を確保する観点から、改正後の独占禁止法の施行に合わせて、独占禁止法第76条に基づく規則や、指針等を整備する」こととしている(後掲の【事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信の取扱いについて】参照)。
【私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(衆議院経済産業委員会・5月29日)】
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。
- 一 減免申請を行う事業者の予見可能性を確保する観点から、新たな課徴金減免制度における事業者が自主的に提出する証拠等の評価方法については、ガイドラインにおいてその明確化を図ること。特に、カルテル・入札談合の対象商品・役務、受注調整の方法、参加事業者、実施時期、実施状況等の評価対象となる情報について、評価方法の考え方や具体例をわかりやすく明示すること。また、制度の運用状況を見つつ、適時適切にガイドラインの見直しを行うこと。
- 二 課徴金減免制度において、事業者の協力度合いに応じた減算率を適用するに際しては、より高い減算率を得ること等を目的として事実を歪曲した資料の提出や供述調書の作成により迅速な実態解明が阻害されることがないよう留意するとともに、運用の検証やガイドラインの策定など適切な対応を行うこと。
- 三 いわゆる弁護士・依頼者間秘匿特権に関して規則・ガイドライン等を整備するに当たっては、範囲、要件について、国際水準との整合性を可能な限り図るよう留意した内容とするとともに、新制度の運用を検証しつつ、制度の拡充も視野に検討を継続すること。
- 四 いわゆる弁護士・依頼者間秘匿特権について、事業者と弁護士との間の法的相談に係る法的意見等の秘密を実質的に保護できるよう、公正取引委員会における判別手続と審査手続を明確に遮断する等、適正手続を確保する制度を本法施行までに整備すること。
- 五 いわゆる弁護士・依頼者間秘匿特権に関する公正取引委員会における運用について、手続の透明性及び信頼性並びに事業者の予見可能性を確保するために、運用事例を定期的に公表するよう努めること。