◆SH2605◆租税における公平の実現(11) 饗庭靖之(2019/06/14)

租税における公平の実現

第11回

首都大学東京法科大学院教授・弁護士

饗 庭 靖 之

 

第4 地方税における租税公平主義

1 地方団体の財政力の均等化のため、法人住民税と法人事業税を地方交付税の原資として、地方団体に配分する仕組みの必要

 東京、大阪、名古屋等の大都市部、とりわけ東京都に大きな担税力のある大会社等の法人が集中していることから、法人住民税と法人事業税の税収は、大都市圏に偏在することとなっている。

 このような状態の結果として、大都市圏の地方団体の高い税収により、大都市圏所在の住民、法人が、他の地域とは異なり、高い税収によって可能となる高い行政サービスを享受するか、あるいは大都市圏の地方団体が豊富な財源を支出に自由に使用できる状態にあるのがよいのかという問題が顕在化している。

 租税公平主義は、税負担は国民の間に担税力に即して公平に配分されなければならないという法原則である。租税の根拠について、税負担は国家から受ける保護や利益に比例して配分されるべきという利益説は、19世紀までの考え方として捨てられている。

 しかし、地方税は、行政のサービスに対応した住民の納税義務という応益負担による課税という性格が強いとされ、地方税を課する根拠として、担税力に応じた課税という応能負担の考え方のみならず、行政からの受益に応じた課税という利益説に基づいた応益負担の考え方がある。

 そして、法人住民税と法人事業税については、地方自治体の自主財源主義の下で、管内の法人事業所が納税する法人住民税と法人事業税を、地方自治体が固有の財源として取得することとされている。法人の所在が大都市圏に集中し偏在していることから、その結果税収が大都市圏に集中していることについて、利益説を基にして、地方税の応益的な性格から、大都市圏が取得することは正当だとの主張が大都市圏の地方団体によってなされている。

 しかし、応能負担に基づき、地方税の主要税項目である法人住民税と法人事業税の課税においては、税負担が担税力に応じて法人間で公平に配分されている中で、法人住民税と法人事業税の課税根拠として、応益負担と応能負担として考えてよいのかということが問題となる。

 また、地方団体の財源の確保のために、地方団体が法人住民税などの地方税の税収によってもなお財政力の弱い地方団体を、国が支える仕組みとして地方交付税制度があるので、地方交付税制度によって地方団体の財政調整の解決を図り得る限界を踏まえて、法人住民税と法人事業税のあり方を検討することが必要と考えられる。

続きはこちらから

バックナンバーはこちら

 

(あえば・やすゆき)

1956年東京生まれ。1975年東京教育大学付属駒場高校卒業・東京大学法学部入学、1979年農林水産省入省、1988年厚生省出向、1991年在加日本大使館出向、1996年農林水産省退官・司法研修所入所(第50期)。1998年光和総合法律事務所入所、2013年末退所。
2005年首都大学東京法科大学院教授(民法、倒産法、環境法等担当)、現在に至る。
2014年1月、首都東京法律事務所を設立。現在首都東京法律事務所代表。

論文:
「生命保険における資産運用成果の契約者への還元について」NBL1110号(2017)、No1112(2017)、「社会保険制度についての提言」法学会雑誌(首都大学東京都市教養学部法学系発行)第58巻第2号(2018)




メールで情報をお届けします
(毎週火曜日・金曜日)

サイト内検索

森・濱田松本法律事務所
長島・大野・常松法律事務所
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業セミナー
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

西村あさひ法律事務所セミナー
西村あさひ法律事務所
TMI総合法律事務所