◆SH2562◆コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(166)日本ミルクコミュニティ㈱のコンプライアンス㊳ 岩倉秀雄(2019/05/28)

コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(166)

―日本ミルクコミュニティ㈱のコンプライアンス㊳―

経営倫理実践研究センターフェロー

岩 倉 秀 雄

 

 前回は、危機収束時の対応と残された課題について述べた。

 一般に危機収束の判断は、危機発生の原因と対策が明確になり、それを公表して対策を実施し始めている場合で、被害者の補償についてもほぼ合意し、行政や組織による関係者の処分が決定、取材もほぼなくなった場合である。

 このような場合、組織は、経営トップによる収束宣言を行い、最終報告書を完成し危機対策本部は解散するが、最終報告書では、どうすれば危機は未然に防げたのか、危機対応に問題はなかったか等を検証し、組織のあり方の本質に迫った見直しを行い、危機対応計画・危機対応マニュアルの改善に反映する。

 組織再生の第一歩は、不祥事発生の原因を徹底的に究明して再発防止の行動を起こすこと、ブランド価値を含め失われた組織資産の程度を把握し(理念、ビジョン、ブランド、方針、戦略、組織構造、組織文化、事業、資金等のあらゆる面を再評価する)、組織全体の再構築を図ることである。

 特に組織文化に問題がある場合には、経営者による強いリーダーシップの下に新たな理念やビジョンを呈示し、迅速・ドラスティックな組織文化の革新が組織のあらゆる階層を巻き込んで実施される必要がある。

 本稿で残された課題は、(1)現場から見た危機管理の在り方、(2)不祥事発生組織の組織再生のマネジメント、(3)イシューマネジメントの研究等である。

 今回は、日本ミルクコミュニティ㈱の危機管理体制の具他例を考察する。

 

【日本ミルクコミュニィティ㈱のコンプライアンス㊳:組織の危機管理⑨】

 これまで、本稿では危機管理の要諦を、危機予防策、危機発生時の対応、危機収束時に分けて、経験を踏まえて理論的に考察してきた。

 今回からは、雪印乳業(株)の不祥事を契機に設立された日本ミルクコミュニティ(株)の危機管理について、『日本ミルクコミュニティ史』((雪印メグミルク株式会社、2014年)428頁~434頁)に基づいて具体的に考察する。

 日本ミルクコミュニティ(株)の危機管理体制は、設立の経緯に鑑み、設立前の経営協議会で協議を重ねて設定したが、会社設立後の様々な事態に対応する中で、更に実態に即して改善した。

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(いわくら・ひでお)

経営倫理実践研究センターフェロー、日本経営倫理士協会主任フェロー研究員。

1976年北海道大学農学部卒、全国酪農業協同組合連合会(全酪連)に入会し、全酪連乳業統合準備室長兼日本ミルクコミュニティ(株)設立準備委員会事務局次長、日本ミルクコミュニティ初代コンプライアンス部長。雪印メグミルク(株)社史編纂室で、『日本ミルクコミュニティ史』と『雪印乳業史第7巻』を編纂(共著)し、2016年10月よりCSR部に異動。2017年同社を退職して「社会経営研究所」(個人事務所)を設立。

青山学院大学大学院修士課程修了、雪印メグミルク(株)時代に、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務コース博士後期課程を単位取得退学。

なお、業務の傍ら、トライアスロンの草創期にハワイ等のアイアンマンレースを3回完走し、日本トライアスロン協会理事長に就任、競技の普及に努めた。