◆SH2505◆企業法務フロンティア「米国ディスカバリーの活用――インターネット上の誹謗中傷の行為者特定を例に(下)」井上 拓(2019/04/24)

企業法務フロンティア
米国ディスカバリーの活用

―インターネット上の誹謗中傷の行為者特定を例に―(下)

日比谷パーク法律事務所

弁護士 井 上   拓

 

 本稿は、米国ディスカバリーを我が国での訴訟のための証拠収集手段として利用するための要件等について、匿名のGoogleアカウントによりインターネット上で誹謗中傷を受けた企業(例えば、口コミサイトに根拠なき低評価及びコメントを投稿された企業)が、当該行為者に対する損害賠償請求訴訟を我が国で提起するために、当該行為者の特定に必要な情報(当該Googleアカウントの情報)を、Google LLC(以下「Google」という。)から取得する場合(以下「本事例」という。)を例に、具体的に解説するものである。

 当該ディスカバリーの根拠条文、申立書、管轄裁判所、及び、申立てが認容されるために法律上必要な3要件については前稿で述べた。本稿は、その続きである。

 

6 裁判所が申立てを認容するか否かを判断する際に重視する4要素

 法律上必要とされる3要件(前稿)を満たす場合、裁判所は、裁量により、申立てを認容できる。もっとも、裁判所は、申立てを認容する裁量を有するに過ぎず、認容する義務を負うわけではない。では、裁判所は、いかなる場合に申立てを認容すべきとされるのか。これについては、連邦最高裁が、網羅的ではないとしながらも、下記4つの考慮要素を示したため、実務上、裁判所はこれらを考慮して、申立てを認容すべきか否かを判断している(Intel Corp. v. Advanced Micro Devices, Inc., 542 U.S. 241 (2004))。

⑴ ディスカバリーの対象者が当該外国裁判の参加者か否か

 第一の考慮要素は、ディスカバリーの対象者(被開示請求者)が、当該外国での手続きの参加者か否かである。申立てが認容されるためには、被開示請求者が、当該外国での手続きの参加者(例えば、当該外国裁判所の民事裁判の被告)でないことが望ましい。なぜなら、被開示請求者が、当該外国での手続きの参加者であるならば、同人に対する開示命令は、当該外国裁判所がなすべきだからである。

 本事例の場合、被開示請求者であるGoogleは、日本で提起される民事裁判の当事者ではないから、裁判所は、当該考慮要素について申立人に有利であると判断する。

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(いのうえ・たく)

日比谷パーク法律事務所 弁護士。2003年:灘高卒業。2007年:東京大学工学部卒業。2009年:東京大学大学院情報学環コンテンツ創造科学産学連携教育プログラム修了。2010年:東京大学法科大学院修了、司法試験合格→司法修習(沖縄)。2011年:弁護士登録。2018年:University of California, Berkeley, School of Law (LL.M.) 修了、University of Southern California, School of Law (LL.M.) 修了。現在:マーシャル・鈴木総合法律グループ(サンフランシスコ)勤務。

日比谷パーク法律事務所 http://www.hibiyapark.net/
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