◆SH2487◆企業法務フロンティア「米国ディスカバリーの活用――インターネット上の誹謗中傷の行為者特定を例に(上)」井上 拓(2019/04/17)

企業法務フロンティア
米国ディスカバリーの活用

―インターネット上の誹謗中傷の行為者特定を例に―(上)

日比谷パーク法律事務所

弁護士 井 上   拓

 

1 はじめに

 米国には「ディスカバリー(Discovery)」という制度がある。ディスカバリーとは、相手方(や第三者)の支配領域下にある文書や証人等について開示を求めることを認める証拠収集手段である。我が国における証拠収集手段[1]と比べると、対象が広く強制力もあるため、強力であるといわれる。

 ディスカバリーは、通常、米国で提訴した後、公判審理(Trial)の前に行われる。しかし、あまり知られていないことだが、我が国の裁判手続の当事者や提訴を予定する者は、米国で別途の訴訟を提起せずとも、ディスカバリーを利用し、米国に所在する証拠を収集することができる。本稿では、筆者の米国での実務経験[2]を踏まえ、いかなる場合に当該ディスカバリーが利用できるのか、つまりその要件等を解説する。

 具体例があった方が分かりやすいであろうから、以下、匿名のGoogleアカウントによりインターネット上で誹謗中傷を受けた企業(例えば、口コミサイトに根拠なき低評価及びコメントを投稿された企業)が、当該行為者に対する損害賠償請求訴訟を我が国で提起するために、当該行為者の特定に必要な情報(当該Googleアカウントの情報)を、米国のGoogle LLC(以下「Google」という。)から取得する場合(以下「本事例」という)を例として、当該ディスカバリーの要件等の説明を試みる。

 なお、本事例は、獲得すべき情報を我が国のプロバイダが保有しているならば、我が国のプロバイダ責任制限法に基づき開示請求をする事案であるから、適宜、それと当該ディスカバリーとの違いについても触れたい。

 

2 根拠条文

 当該ディスカバリーの根拠条文は、合衆国連邦法典第28編の§1782(a)である。本条のタイトルは「外国及び国際法廷並びにその当事者のための援助」(Assistance to foreign and international tribunals and to litigants before such tribunals)である。タイトルのとおり、本条は、米国外の法廷での手続きの当事者等に対して、米国のディスカバリーによる証拠収集を認めることで、援助するものである。

 

3 申立書

 ディスカバリーを求める者は、本条(§1782(a))を根拠に、裁判所に対して、申立てを行う(以下「本申立て」という)。本事例の場合、誹謗中傷の被害者たる企業(の代理人)が、「獲得したい情報が記載された文書等の提出を求める書面(Subpoena)をGoogleに対して送付することを認められたい」と求める申立書を裁判所に提出する。被申立人はいないので、本申立ては「Ex Parte Application」と呼ばれる。「Ex Parte」とは「当事者一方だけの」という意味である。

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(いのうえ・たく)

日比谷パーク法律事務所 弁護士。2003年:灘高卒業。2007年:東京大学工学部卒業。2009年:東京大学大学院情報学環コンテンツ創造科学産学連携教育プログラム修了。2010年:東京大学法科大学院修了、司法試験合格→司法修習(沖縄)。2011年:弁護士登録。2018年:University of California, Berkeley, School of Law (LL.M.) 修了、University of Southern California, School of Law (LL.M.) 修了。現在:マーシャル・鈴木総合法律グループ(サンフランシスコ)勤務。

日比谷パーク法律事務所 http://www.hibiyapark.net/
所属する弁護士がそれぞれコーポレートガバナンス等の会社法、M&A、特許法・著作権法等の知的財産権法、ファイナンス法、スポーツ法、システム開発を含むデジタル法、紛争処理などの得意分野に精通し、各分野のトップランナーとして「少数精鋭」と呼ばれるにふさわしいリーガル・サービスを提供するブティック型ファーム。

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