◆SH2409◆弁護士の就職と転職Q&A Q71「採用面接ではメモをとるべきか?」 西田 章(2019/03/18)

弁護士の就職と転職Q&A

Q71「採用面接ではメモをとるべきか?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 正式な採用面接では、応募者がひとりで訪問し、人材紹介業者は同席しません。しかし、正式応募前の段階での、いわゆる「カジュアル面談」には、応募を検討している候補者と共に、できれば、私も面談に同席するように心がけています。応募を促すべきかどうか、両者の相性を把握するために最も手っ取り早い方法だからです。面談における所作に関しては、ビジネス書の『メモの魔力』(前田裕二著)がヒットした影響なのか、最近の傾向として、面談でメモをとる応募者が増えてきました。他方、「面接でメモをとること」に対して心理的抵抗を感じて、手を膝の上においたままで、姿勢よく応答することに集中する応募者も根強く存在します。

 

1 問題の所在

 「メモ=相手方の発言を記録する」という固定観念から、採用面接を受けるに際して、メモをとることを意識的に控える消極派がいます。確かに、就活における面接のイメージとして、「ドアをノックしてから面接官が待っている部屋に入室し、ぽつんと置かれたパイプ椅子に座らさせられて、人定質問からスタートする尋問に答える」という流れを想定すれば、「面接に臨む=面接官から一方的に投げかけられる質問に答える」となるため、応募者の側でメモをとるべき場面は生じません。

 しかし、転職活動における面接官と応募者の関係は、よりフラットであり、面接は(一方通行の被告人質問の場ではなく)「双方向のコミュニケーションの場」となります。採用プロセスの実務上も、書類選考で「基本スペックを満たしている」という候補者に対しては、面接は「コミュニケーション力はあるか?」「うちで働きたいと真剣に考えてくれているか?」をチェックする場となっています。そこで、応募者にとっての「面接でメモをとってもよいかどうか?」についての判断は、「メモをとることが、面接の印象点を下げることがないか?」という問題への各人の考え方が現れるものとなります。

 ここでも、メモをとることへの消極説は根強く存在します。まず、「会話は相手の目を見て行うべきである」という考えからは、面接官が話してくれている時に、手元のノートに目を落として、メモをとるのは失礼に当たるとも考えられます。実際にも、メモをとることに集中し過ぎたら、会話の流れは途切れてしまいます。また、面接官によっては、「メモをとられる=言質を取られる」と位置付けている方もいますので、「メモをとられてしまうと、オフレコで、ぶっちゃけた話をすることができなくなる」という制約を感じられてしまうこともあります。

 

2 対応指針

 面接におけるメモとりには、(1)ノートと筆記具を持参するか、(2)ノートを持参したら、何をメモにとるか、(3)逆質問に利用できるか、という論点があります。

 最近の有力説に従えば、ノートを持参して、「メモできる態勢」を整えておくのが好印象だと考えられています(現職のオフィスを手ぶらで抜け出した際には、面接官にリーガルパッドを借りる例もあります)。

 ただ、面接テクニック的には、メモとりの目的は「自分の聞きたい事項を覚えておく」というよりも、印象点の向上を狙って、「面接官が熱くなって語ったポイント(職業的な倫理観や哲学を含む)を、しっかりと受け止めて理解したという姿勢を示す」ためのボディーランゲージへと比重が移っています。その他、面接官が部外者に広めたくないと考える情報(クライアントの固有名詞を含む)については(メモしたい事項であっても)敢えて(その場では)メモをとらない、という配慮も大切とされています。

 また、ノートを持参することの見せ場は、「逆質問」にあります。「最後になりますが、何か質問はありませんか?」と尋ねられて、ノートを見ながら質問を選んでいると、面接官に「よく準備して面接に臨んでくれている」という「応募の真剣さ」を理解してもらいやすいとも言われます(質問がなくとも、「お伺いしたいことはすべてお聞かせいただけたので、追加の質問はありません」と自信を持って答える振りもできます)。

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(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 




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