◆SH2373◆企業活力を生む経営管理システム―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―(第13回) 齋藤憲道(2019/03/04)

企業活力を生む経営管理システム

―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―

同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

第2部 重大リスク・不正を発見する従来の手法

3. 不正(犯罪)リスクを発見する「会計監査人」の目線

 会計監査人は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して決算書類が作成されていることを監査して、監査報告書を作成する。

 しかし、意図的に行われて隠蔽される決算書類の虚偽表示が後を絶たない。これを通常の監査で発見することは、ミスから生じる虚偽表示と比べると難しく、特に、経営幹部が主導する不正(犯罪)は内部統制機能が大幅に減殺されるために、一段と難しい。

 監査人は、職業的懐疑心をもって不正(犯罪)リスクに対応した監査を行うように心がけており、以下のような不正リスク対応基準が作成されている。

  1. (注) 監査人(公認会計士)の責任は、経営者の作成した決算書類に対して監査意見を表明することにある[1]。職業的専門家として適切に注意を払って監査すれば、監査人は責任を果たしたことになる。

 

〔監査人の、監査における不正リスク対応基準[2]

 (筆者の見方)次の(1)(2)は不正発見に係るノウハウの蓄積であり、監査を行う者に有益である。

(1) 不正リスクに対応した監査

  1. ① リスクの発見手法
  2. ・ 企業と業界の不正事例を理解する。  
  3. ・ 把握した事実・想定される不正の要因・態様等を監査対象(監査先)に質問する。
  4. ・ 不正リスク要因を考慮して監査計画を策定する。
  5. ・ 監査チーム内の討議を行い、情報を共有する。                      
  6. ・ 不正リスクに応じた適合性・証明力・分量を備えた監査証拠を入手する。 
  7. ・ 企業が想定しない要素を監査に組み込む。(監査手続の種類、実施時期、範囲)
     
  8. ② 監査証拠の収集、疑義への対応              
  9. ・ 不正リスクに関して行った確認に、無回答・不十分回答の場合は、代替的な手続を行って証明力のある監査証拠を入手する。
  10. ・ 入手した監査証拠の十分性・適切性を評価し、足りない場合は追加的な監査手続を行う。
  11. ・ 矛盾した監査証拠があった場合は、監査手続を変更・追加する。
     
  12. ③ 重要な虚偽表示の疑義があるときに監査人がとるべき行動
  13. ・ 不正による重要な虚偽表示を示唆する状況があるときは、経営者に質問して説明を求めるとともに、追加的な監査手続を行う。
  14. ・ 不正による重要な虚偽表示の疑義あるときは、監査計画を修正し、これに従って監査手続を行う。
  15. ・ 専門家の業務を利用する。(金融商品の評価、企業価値の評価等)
  16. ・ 不正リスクに対応した審査を行う。(監査事務所の方針と手続きに従う。)
  17. ・ 不正による重要な虚偽表示の疑義があるときは、監査事務所の方針・手続きに従い所内審査が完了するまで、意見表明しない。
  18. ・ 監査役等と連携する。
  19. ・ 経営者の関与が疑われる不正を発見したときは、監査役等に報告・協議し、経営者に問題点の是正等適切な措置を求め、その不正が決算書類に与える影響を評価する。
  20. ・ 監査調書に記載する。
    (財務諸表に「不正による重要な虚偽表示の疑義あり」と判断したときは、「監査調書[3]」に疑義の内容・監査手続とその結果・判断を記載する。)

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(さいとう・のりみち)

1971年東京大学法学部卒業。同年松下電器産業㈱に入社し、営業、経理、経営企画、法務の業務を担当。松下電子部品㈱経営企画室長、松下電器産業㈱法務本部法務部長、JVC・ケンウッド・ホールディングス㈱監査役等を経て、2009年パナソニック㈱を退職。損害保険ジャパン日本興亜㈱ 業務品質・コンプライアンス委員会委員長を歴任。

また、内閣府消費者委員会委員(2015年秋退任)、消費者安全調査委員会臨時委員(現)、製品事故判定第三者委員会合同会議議長(現。消費者庁と経済産業省合同)、国民生活センター紛争解決委員会委員(現)、経済産業省産業構造審議会臨時委員、神戸市公正職務審査会委員(現)

 




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