◆SH2370◆債権法改正後の民法の未来74 追完権(3・完) 藤田増夫(2019/02/28)

債権法改正後の民法の未来 74
追完権(3・完)

肥後橋法律事務所

弁護士 藤 田 増 夫

 

4 コメント(今後の参考になる議論)

(1) 改正民法562条1項但書

 追完権については、改正民法の債権総論では明文化されなかったが、改正民法562条1項但書において、売主は、買主に不相当な負担を課すものでないときは買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる旨の規定が置かれた。かかる規定については、買主が追完請求をしていない場面や追完の要求をしているものの追完方法を指示していない場面でも妥当するものとみるべきであるとして、この限りで売主の追完権を定めたものということができる旨の指摘がなされている(潮見佳男『新債権総論Ⅰ』(信山社、2017)334頁)。そして、改正民法562条は、改正民法559条を介して有償契約全般に準用されており、債権の発生原因が有償契約である点(有償性)に基礎を置く規定ではないため、無償契約を含め、広く追完請求権一般に妥当する考え方がここに内包されているとみてよい(潮見・前掲334頁)との指摘もなされている。なお、改正民法562条1項但書については、例えば、買主から履行の追完請求権の行使として代替物の引渡しを求める訴訟を提起されたという事案においては、売主は適法に修補による履行の追完を選択したことを請求原因に対する権利消滅の抗弁として主張することができるものと解されている(筒井健夫=村松秀樹編著『一問一答民法(債権関係)改正』(商事法務、2018)277頁)。

 改正民法562条1項但書について、今後、個別具体的な事案において、如何に解釈適用されるか注視していきたい。

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(ふじた・ますお)

肥後橋法律事務所 http://higobashi.com/

2002年弁護士登録(大阪弁護士会)、京都家庭裁判所家事調停官(非常勤)や、近畿大学(法学部・経営学部)非常勤講師(民法,金融商品取引法)を歴任。

主な著書等
「濫用的会社分割に関する法人格否認の法理の柔軟適用と一つの立法提言」関西商事法研究会編『会社法改正の潮流 理論と実務』(新日本法規出版、2014)、(共著)知的所有権問題研究会編『最新商標権関係判例と実務』(民事法研究会、2012)、(共著)大阪弁護士会民法改正問題特別委員会編『実務解説 民法改正』(民事法研究会、2017)、ほか多数。