◆SH2299◆弁護士の就職と転職Q&A Q65「カウンセル/オブカウンセル狙いというキャリア計画は合理的なのか?」 西田 章(2019/01/28)

弁護士の就職と転職Q&A

Q65「『カウンセル/オブカウンセル狙い』というキャリア計画は合理的なのか?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 大規模な法律事務所の新人弁護士と話していると、その多くが「パートナーになりたい」という意欲を持たずに入所していることに気付かされます。リーマンショック以降、「将来のいつかの段階ではインハウスに転向したい」という声が聞かれることは珍しくなかったのですが、最近では、「カウンセル又はオブカウンセルになりたい」という希望を口にするジュニア・アソシエイトが増えて来ました。そこで、本稿では、「(パートナーではなく)カウンセル/オブカウンセルを目指す」というキャリア・プランニングのリスクについて整理してみたいと思います。

 

1 問題の所在

 欧米のローファームに倣って、日本の企業法務系事務所でも、「パートナー」と「アソシエイト」に続く「第3の類型」として、「カウンセル」又は「オブカウンセル」といった名称の「アソシエイト以上、パートナー未満」の中二階ポストを置く先が増えて来ました。日本での歴史的経緯としては、「第3類型の職位を創設することで多様な働き方を確保する」という人事制度を戦略的に設計したというよりも、「パートナー資格を付与できない(又は維持させられない)シニアな弁護士をどういうタイトルの下に置くべきか?」という具体的事例が先行して積み重ねられて来たもののように思われます。そして、移籍の場面では、「現事務所でパートナー待遇であるため、アソシエイトという肩書で受け入れるのは、対外的な信用を毀損してしまう」「しかし、当事務所のパートナーに見合うほどの実績はない」という候補者を迎え入れる職位としても活用されました。

 そのため、当初は、「パートナー未満」の部分が強調されてしまい、「カウンセル/オブカウンセルとして事務所に残るのはどうか?」という提案を退職勧告のように受け止めるシニア・アソシエイトも見られました。しかし、最近では、むしろ、「アソシエイト以上」という部分に注目して、この職位に就くことに肩身の狭さを感じることなく、「プレイヤーとしては一人前の仕事ができる」という肩書きを積極的に評価する若手が増えています。現実にも、「アソシエイトからカウンセルに昇格することで、海外ローファームから案件の照会を受けることも増えた」という声も聞かれます。さらに、「パートナーになって出資をしたいとも思わないし、事務所経営に関与したいとも思わない」という若手にとっては、「カウンセル/オブカウンセル」ポストは、ある意味では、「パートナー以上に魅力的なポスト」に映るようになっています。

 しかし、「カウンセル/オブカウンセル」職位をどう設計するか(任期付きかそれとも期限の定めなきポストか。固定給や最低保証を置くか、それとも完全歩合給か等)も事務所の経営事項です。そこで、「カウンセル/オブカウンセル制度がより拡大する方向にある」ならば、それを目指すキャリア設計も合理的だと言えますが、逆に「今後、縮小する方向にある」ならば、若いうちから目標に置くべきキャリアには相応しくないように思われます。

 

2 対応指針

 所属事務所において、パートナーを目指して励んで来たシニア・アソシエイトが、(将来にパートナーとなる希望を捨てずに)「カウンセル/オブカウンセル」に昇格して業務を続けるシナリオに特に問題はありません(現実にも「カウンセル/オブカウンセル」が、パートナーに内部昇格したり、他事務所に「パートナー」として移籍する事例も増えて来ています)。

 他方、ジュニア・アソシエイト時代から「カウンセル/オブカウンセル狙い」で業務を続けることには高いリスクが伴います。一般論としては、まず、「カウンセル/オブカウンセルの拡大政策」は、法律事務所の好景気時に限られたものであり、不況時には「最もリストラ対象となりやすい職位」であると言えます。また、優秀な若手弁護士を豊富に確保できる事務所であるほどに、所内競争は激化し、「所内のパートナーから紹介してもらえる仕事」を確保することが難しくなる、という傾向も見受けられます(「同一法分野を専門とする後輩弁護士が育たないこと」が、所内における自己の地位を保全してくれるという悩ましい状況に置かれてしまいがちです)。

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(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 

 




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