◆SH2277◆最高裁、弁護士会照会に対する報告義務の確認訴訟について、確認の利益を否定 唐澤 新(2019/01/15)

最高裁、弁護士会照会に対する報告義務の確認訴訟について、確認の利益を否定

岩田合同法律事務所

弁護士 唐 澤   新

 

 弁護士会照会とは、弁護士が、受任事件につき、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出て、当該弁護士会が、その申出の適否を判断した上で当該照会先に対して必要な事項の報告を求める制度である(弁護士法23条の2)。受任事件にかかる事実調査、証拠収集を目的として弁護士がよく利用する制度であるが、照会先が報告を拒絶し、弁護士会照会を行った弁護士会や照会を申し出た弁護士又はその依頼者が照会先に対して不法行為に基づく損害賠償請求を行うなど、法的紛争に至るケースも少なくない。最高裁は、平成30年12月21日、弁護士会による、照会先を相手方とした、弁護士会照会に対する報告義務の確認請求について、確認の利益を否定し、訴えを却下したことから(以下、「本判決」という。)、本稿において紹介したい。

 本判決において確認の利益が争点となった背景には、本判決に至るまでの当事者間の一連の訴訟(以下、「本訴訟」という。)の経緯がある。本訴訟は、愛知県弁護士会が、転居届の有無等の事項について報告を拒否した日本郵便株式会社に対し、①主位的に不法行為に基づく損害賠償を、②予備的に弁護士会照会に対する報告義務の確認を求めた事案であるが、このうち、不法行為に基づく損害賠償については、第一審が否定、控訴審が肯定したのに対し、最高裁は、弁護士会照会に対する報告を受けることについて弁護士会が法律上保護される利益を有するものとは解されないとして、不法行為の成立を否定した。

 そのため、予備的請求である報告義務の確認請求に関する審理のため本件は高裁に差し戻されたが、差戻控訴審は、弁護士会照会制度の実効性を確保することは法的に保護された弁護士会固有の利益であること、報告義務の存否に関し弁護士会と照会先の判断が食い違った場合には司法判断により紛争解決を図るのが相当であること、報告義務確認訴訟において認容判決が下されれば照会先による履行の蓋然性が見込まれること等の理由で、確認の利益を認めた上で、報告義務を認める判決を下した。本判決はかかる差戻控訴審判決に対する上告審判決である。

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(からさわ・あきら)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2010年東京大学法学部卒業。2012年東京大学法科大学院卒業。2013年弁護士登録。『Q&Aインターネットバンキング』(共著 金融財政事情研究会 2014年)、『The International Comparative Legal Guide to: Project Finance』(共著 Global Legal Group 2014年)等執筆。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

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1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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