◆SH2223◆企業法務フロンティア「カルロス・ゴーン容疑者逮捕の衝撃とガバナンスに関する若干の考察」 松山 遙(2018/11/30)

企業法務フロンティア
カルロス・ゴーン容疑者逮捕の衝撃とガバナンスに関する若干の考察

日比谷パーク法律事務所

弁護士 松 山   遙

 

 2018年11月19日の夜以降、新聞・テレビ・インターネットなどのあらゆるメディアは、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車の会長を兼務するカルロス・ゴーン容疑者逮捕のニュースで持ちきりである。「コストカッター」の異名を持ち、経営不振にあえいでいた日産自動車をV字回復させたカリスマ経営者が、金商法違反(有価証券報告書虚偽記載)容疑で逮捕されるという事態は、日本だけでなくフランス、世界にも衝撃を与えている。

 本コラムを執筆している時点(11月21日)では、日産自動車社長による記者会見及びマスコミ報道などで不正行為の概要が示されているだけで、その詳細や背景事情、ゴーン容疑者の認否については明らかになっていない。そのため、本事案に関する具体的な論評を行うには、検察の捜査あるいは日産自動車が設置する調査委員会による調査の進展を待たなければならないが、社長会見でも「ガバナンスの観点で課題が多い」とコメントされているとおり、コーポレートガバナンスやコンプライアンスの視点から考えさせられるところは多い。

 

⑴ 経営トップによる不正行為を防止することの難しさ

 本事案が提起する問題点として、経営トップによる不正行為を防止するためにはどのような施策を講じたらよいのかという点があげられる。

 会社法の枠組みに従えば、取締役の職務の執行を監督・監査するための機関として、取締役会及び監査役が置かれている。したがって、経営トップの不正行為を防止するべき監視・監督の責務を負うのは、取締役会のメンバーたる取締役及び監査役である。

 また、不正行為の予防・防止のためには、内部統制システムを適切に構築・運用することが重要であると言われる。確かに、内部統制システムとは、経営トップを含む取締役の職務執行の適法性を確保し、監督するための仕組みである以上、経営トップが長期間にわたり不正行為を行っていた場合には、内部統制システムが適切に機能していなかったと言わざるを得ない。

 しかし、終身雇用を原則とし、従業員のみならず経営者層においても流動性のない日本社会において、いくら社内出身の取締役・監査役に対して経営トップを監督せよと言っても実効的な監督が難しいということは、かねてより指摘されている。内部統制システムにしても、その担当役員は業務執行取締役として経営トップの指揮命令下にあり、そのミッションも、従業員による不正行為をできる限り早く把握して社内で適切に対応することに主眼が置かれていることが多い。

 それに加えて、経営トップが親会社・創業家といった支配株主の出身である場合には、社内における経営トップの権力は絶大である。取締役会で過半数の取締役が異論を唱えたとしても、株主総会で取締役会のメンバーを入れ替えることができてしまうのであるから、社内の仕組みをもって経営トップの不正・暴走を糾すことは非常に難しい。過去においても、大王製紙などの経営トップによる不祥事案は、同様の問題を抱えていたと言える。

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(まつやま・はるか)

日比谷パーク法律事務所 弁護士(パートナー)。1993年東京大学法学部卒、東京地裁判事補任官を経て、2000年弁護士登録、日比谷パーク法律事務所入所。
・(株)三菱UFJフィナンシャル・グループ社外取締役(指名委員、報酬委員)
・(株)T&Dホールディングス社外取締役
・(株)バイテックホールディングス社外取締役(監査等委員)
・三井物産(株)社外監査役

日比谷パーク法律事務所 http://www.hibiyapark.net/

所属する弁護士がそれぞれコーポレートガバナンス等の会社法、M&A、特許法・著作権法等の知的財産権法、ファイナンス法、スポーツ法、システム開発を含むデジタル法、紛争処理などの得意分野に精通し、各分野のトップランナーとして「少数精鋭」と呼ばれるにふさわしいリーガル・サービスを提供するブティック型ファーム。

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