◆SH2211◆著者に聞く『はじめて学ぶ社外取締役・社外監査役の役割』松山遥弁護士② 西田 章(2018/11/27)

著者に聞く『はじめて学ぶ社外取締役・社外監査役の役割』松山遥弁護士②

日比谷パーク法律事務所
弁護士 松 山   遥

(聞き手)西 田   章

 

  前回(第1回)は、松山遥弁護士が、5年間の裁判官勤務を経て、日比谷パーク法律事務所にて弁護士のキャリアをスタートさせて、旧経営陣の経営責任追及訴訟や会社の支配権を巡る仮処分の代理人業務や株主総会指導で活躍を始められたキャリアについてお伺いしました。

 今回(第2回)は、松山弁護士が、社外役員を務めるようになった後について、『はじめて学ぶ社外取締役・社外監査役の役割』の記述を補足しながら、事務局からの事前説明への対応、中期経営計画の討議方法や指名委員会のメンバーの任期のあり方など、取締役会や指名・報酬委員会への参加を通じて得られた経験則を教えていただきます。

 

 

 

 今度は、松山先生ご自身が、社外役員を務められたご経験について教えていただきたいと思います。初めての社外役員は、どういう経緯で就任されたのでしょうか。
 1社目は、日比谷パークの元パートナーの顧問先企業から、社外監査役就任を依頼されました。ずっと以前に元パートナーと一緒にその会社の案件を担当したことがあり、それを覚えていらした創業社長からのお声がけです。
 コーポレートガバナンス・コード(CGコード)ができる前の話ですよね。
 はい、CGコードがない時代です。女性役員が必要と言われていたわけでもありません。外部弁護士として、少し接点があったので、それをきっかけにお誘いいただきました。
 外部弁護士としても関与した先から社外への就任を依頼されることもあるのですね。
 そうですね。総会指導を担当した会社から、社外取締役を依頼されたこともありました。
 複数の社外役員をされていると、日程調整も大変ですし、拘束時間も増えていますよね。
 最近は、取締役会、監査役会だけでなく、事前説明もあるし、委員会もあるので、日程調整は昔よりも大変になっています。
 松山先生ならば、はじめて役員に就任されたときから、ご活躍をなされたのでしょうね。
 いえ、最初は、取締役・監査役としてどういう発言をすればいいのか、よくわかりませんでしたし、すごく緊張しました。
 でも、外部弁護士としてのアドバイスは慣れていらっしゃったんですよね。
 外部弁護士としては、担当者から相談を受けて、資料を確認したり、投資判断が善管注意義務に違反しないかといったスポット的な論点についてのリーガルオピニオンを書いたりという仕事はしていました。しかし、取締役会が年間を通じて、どんな議案についてどういう議論をしているのかといった点までははっきりわかっていませんでしたし、法律問題などが出てこない議案も多く、そのような議案について何を発言すればいいのか、最初はとても緊張しました。
 就任当初から、取締役会等で積極的に発言をなされていたのでしょうか。
 なるべく「何か発言をしなければ」とは意識していました。ただ、最初はなかなかそううまく発言できるものではありません。そこで、初めは、「このデータの趣旨を教えてください」といった質問や、資料についてリスク情報をもっと整理した方がいいといった弁護士的な発言からはじめました。
 アドバイザー的な役割も兼ねていたのかもしれませんね。
 そうですね、自分の専門性との関係では、やはり、善管注意義務違反が問題になるようなリスク判断や、不祥事絡みの案件では、弁護士として発言はしやすいです。
 みなさん、「この論点は自分の出番」みたいな点から発言を始めて、徐々に、ご自身の専門以外のことにも発言するようになる、という流れではないでしょうか。
 いきなり「中期経営計画」について発言するのはハードルが高いですよね。
 そうですね、やっぱり経営者の経験があるわけではないので。まずは、「ここは私の出番」と思えるところは必ず発言する、というところから始めました。
 他の社外役員の発言から学ぶこともあるのでしょうか。
 はい、取締役会に参加するようになって、初めて、「経営者目線」というものが理解できたような気がします。大企業ご出身の社外役員の方々の発言は、とても勉強になります。
 それぞれの出身母体の企業で培ったご経験が活かされているのですね。
 例えば、製造業出身の社外役員の方で米国で初めての工場を立ち上げたご経験があるとか、小売業で経済情勢が厳しい環境下で収益をV字回復させたような実績を残した方とか、あと上場企業のトップでIRや市場対応に気を配られてきた方とか、いろいろなご経験をふまえて鋭い視点でご発言されるので、そういったご発言・ご意見を聞くことができるのは、私にとって非常に貴重な経験です。
 通常の弁護士業務の中では、なかなか「経営者目線」は身に付きませんね。
 はい、私も、弁護士としての仕事の中では触れたことがありませんでした。そもそも、日頃の業務では担当者の方とお話することはあっても経営トップとお話する機会は多くありませんし、総会指導等でお会いしても、経営に関する深い話をしませんから。
 社外取締役には、「経営者目線」が求められるのでしょうか。
 そうですね、弁護士や会計士は、仕事の性質上、リスク情報や問題点を探して指摘するというスタンスで議論しがちなのですが、取締役会では、戦略や方向性の議論も多く、やはり効率的な経営をしているか? という観点が求められると思います。
 取締役会に社外役員として、どのような経験、専門性を持った人材を選ぶかは、重要ですね。
 CGコードが指摘する「多様性」というのはすごく重要だと思います。
 各企業は、どういう観点からの、どういうアドバイスを期待するか、どういう観点からの監督を強化したいのか、を真剣に考えた上で社外役員の人選をすべきだと思います。
 それでは、『はじめて学ぶ社外取締役・社外監査役の役割』について、お伺いしたいと思います。弁護士の間で、とても良い評判を聞きます。
 ありがとうございます。商事法務の企画では法律の専門知識のない初学者向けで誰でも読めるようにということで、表紙や題名も初学者向けにしたのですが、執筆を始めたらいろいろ書きたいことが増えてしまい、「中を開いたら字ばっかり」という本になってしまいました(苦笑)。ただ、社外役員に就任した弁護士の先生などからは「とてもわかりやすい」と評価していただいたのですが。
 コンセプトとしては、社外役員になったときに、1冊目に手に取る本、机の上に置いておいて、何かあったときにすぐに参照できるようにしておく本、という位置付けですよね。
 はい、手に取りやすい本のつもりで書き始めたのですが、実際に書いていくと、自分の経験も踏まえて、実務的なことを整理して、書きたいことを盛り込んでいったら、活字が多くなり過ぎて、少し専門的になってしまったかもしれません。
 「取締役会報告事項と留意点」も詳しく記述されていますよね。
 そこは、日本企業が社外役員を入れるならば、特にやらなければならないところですので力を入れて書いています。
 また、「コラム」は、きわめて実務的ですよね。例えば、「社外監査役は5月中旬の出張は控える!」とか。
 実際にそうですよね。5月に出張は入れられません、決算だし、監査役は監査報告書を作らなければならないので、スケジュールがタイトです。
 それに、本には書いていませんが、「月末に風邪を引かない」も大事ですね。役員会は月末に集中しているので、月末に風邪で1週間も休んでしまうと、すべての会社で欠席が付いてしまいます。
 『はじめて学ぶ社外取締役・社外監査役の役割』には、「リスクを取ってでも実行するべきかどうかをよく考えて、当該議案に賛成するかどうかを判断しなければならない」とありますが、先生ご自身は、「反対する」という選択肢を持って会議に臨んでおられるのでしょうか。

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(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 

 




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