◆SH2181◆「会社は誰のものか」をあらためて考える(1) 梅谷眞人(2018/11/07)

「会社は誰のものか」をあらためて考える(1)

富士ゼロックス株式会社
知的財産部マネジャー

梅 谷 眞 人

 

1. 会社は誰のものかいう問題の立て方について

 「会社は株主のものであり、株主は会社を所有している」という命題、そしてその命題から導かれる「株主利益の最大化」のみが第一優先であるという主張は、資本主義社会における合理的投資行動のインセンティブを投資家に与える経済理論として、リスク・テイカーである出資者に意思決定権を与える理論として、あるいは経営者の利己的行動をコントロールする理論としては、正しい面があるのかもしれない[1]。しかし、日本法の実定法解釈論としては、何か違和感がある。
 この命題は、定義されない用語を曖昧に使っていて、「会社」の定義や「もの」の意味が不明確であり、命題の立て方それ自体が論理的に不完全である。そして、その本質は、複数の利害関係人(ステイクホルダー)の利益が対立したときに、誰の利益を優先するかを決定する価値判断を正当化する理由として使われる一種のイデオロギー(集団の行動を制約する意識ないし思想信条の体系)のように思える。

 第一に、「会社は誰のものか」と問うとき、「会社」とは何か。(a)法人としての会社それ自体、(b)会社が使用、収益、管理および処分している有体および無体の財産、(c)自然人である労働者が提供する労務の結果として得られる成果、すなわち営利法人としての活動およびその活動から得られる収益または損失、(e)会社が優先順位を置くべき価値、(f)会社の意思決定権限など、論者が何を想定して「会社」という言葉を使っているのかを明らかにすべきだと思う。

 第二に、「ものである」とはどういう意味か。(a)所有権の帰属なのか、(b)会社財産の管理処分権の帰属なのか、(c)経営者が優先順位を置くべき利害関係人の選択基準なのか、(d)裁判所が法的価値判断において誰の利益を優先して事件を審理判断すべきという基準なのか、(e)会社は誰の何の利益を守るために存在するのかなど、「ものである」という言葉についても、使われる場面によってその意味が異なると感じる。

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(うめたに・まさと)

1960年東京生まれ。1983年中央大学法学部法律学科卒業、1999年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、日立マクセル株式会社、Maxell Corp. of America、富士ゼロックス株式会社法務部、関連会社の監査役、東京都立大学(首都大学東京)非常勤講師、富士ゼロックス株式会社知財渉外グループ長などを歴任。
著書に『データベースの法的保護』(テレコム社会科学賞奨励賞)、『ジョイントベンチャー戦略大全』(共著・M&Aフォーラム賞奨励賞受賞)など。

 




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