◆SH2140◆コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(109)雪印乳業㈱グループの事件を組織論的に考察する⑲岩倉秀雄(2018/10/16)

コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(109)

―雪印乳業(株)グループの事件を組織論的に考察する⑲―

経営倫理実践研究センターフェロー

岩 倉 秀 雄

 

 前回は、大樹工場の停電事故により、脱脂粉乳の製造工程で黄色ブドウ球菌の産生する毒素エンテロトキシンが生産されたメカニズムについて述べた。

 2000年3月31日、大樹工場の電気室にツララが落下、停電が完全に回復するまで約9時間を要し、この間に工程中で黄色ブドウ球菌が増殖した。

 4月1日製造の脱脂粉乳には、細菌数が最大で9万8,000個/グラム検出され、社内規格の9,900個/グラム以下はおろか、乳等省令の規格5万個/グラム以下も超えるものがあったが、4月10日には、これを原料の一部に用いて脱脂粉乳を製造した。

 4月10日製造の脱脂粉乳は、殺菌により細菌数は規格内まで減少したが、熱に強いエンテロトキシンは残った。

 今回は、それらの毒素に汚染された脱脂粉乳の流通経路と、大樹工場の問題点について考察する。

 

【雪印乳業(株)グループの事件を組織論的に考察する⑲:食中毒事件の原因と問題点②】

1. 大樹工場製造の脱脂粉乳の流れ(『雪印乳業史 第7巻』409頁~411頁)

 4月1日付製造脱脂粉乳450袋のうち、360袋は八ヶ岳雪印牛乳に、50袋は神戸工場に輸送された。

 また、4月10日付製造脱脂粉乳750袋のうち、278袋は大阪工場に、32袋は神戸工場に、40袋は福岡工場に転送された。

 神戸工場では、原材料として脱脂粉乳を使用している製品による苦情は380件届けられ、このうち、該当脱脂粉乳が使用された製品に関する有症苦情が33件あったが、苦情品、未開封製品からエンテロトキシンは検出されなかった。

 これらから、厚生省は神戸工場製品による苦情と、大樹工場製造の脱脂粉乳との食中毒に関する明確な関連はないと判定した。

 神戸工場製品による苦情は、全て大阪工場製品による食中毒が報道されて以降に届けられたものであり、報道による心理的影響及び固有記号表記による消費者の混乱による影響も大きいと思われた。

 福岡工場においては、2000年6月9日、大樹工場の4月10日製造の脱脂粉乳40袋を乳飲料製造に使用したが、当該製品にかかわる苦情は報告されなかった。 

 これは、他の調合タンク由来の原材料と混合され、エンテロトキシンA型が希釈されたためと判断された

 八ヶ岳雪印牛乳では、当該製品を喫食したことによる苦情が7件あったが、これも黄色ブドウ球菌による食中毒と断定するにはいたらなかった。

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(いわくら・ひでお)

経営倫理実践研究センターフェロー、日本経営倫理士協会主任フェロー研究員。

1976年北海道大学農学部卒、全国酪農業協同組合連合会(全酪連)に入会し、全酪連乳業統合準備室長兼日本ミルクコミュニティ(株)設立準備委員会事務局次長、日本ミルクコミュニティ初代コンプライアンス部長。雪印メグミルク(株)社史編纂室で、『日本ミルクコミュニティ史』と『雪印乳業史第7巻』を編纂(共著)し、2016年10月よりCSR部に異動。

青山学院大学大学院修士課程修了、雪印メグミルク(株)時代に、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務コース博士後期課程を単位取得退学。

なお、業務の傍ら、トライアスロンの草創期にハワイ等のアイアンマンレースを3回完走した。

 

 




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