◆SH2146◆企業法務フロンティア「適正な経営原理に関わる『3つの誤訳と誤解』により、企業不祥事が続発」 久保利英明(2018/10/17)

企業法務フロンティア
適正な経営原理に関わる『3つの誤訳と誤解』により、企業不祥事が続発

日比谷パーク法律事務所

代表弁護士 久保利 英 明

 

 最近、トップも取締役会も知らない不祥事が続発している。2015年に端緒が発覚した東芝に続き、2017年秋以降、素材メーカーのデータ改竄や、自動車メーカーの無資格検査事件の発覚が相次ぎ、日本企業への信頼が揺らいでいる。発覚したのは最近であるにしても、こうした不正が30年以上も継続し、常態化していたのにトップは知らず、内部統制も機能していなかった。

 その真因は何か、再発防止のために何をすべきだったのか。その根底には、不祥事対策基本理念に関する「誤訳と誤解」がある。この点を是正しなければ、不祥事の根絶は不可能である。

 

1. 「コンプライアンス」を「法令遵守」と訳すのは誤訳であり、誤解を招く元である

 コンプライアンスとは本来は力学の用語で「外力に応じて柔軟にしなる可塑性」のことである。これを経営や組織原理の文脈で用いるなら「組織が社会の要請に誠実に従うこと(comply)」である。敢えて日本語に訳すなら「社会適合性」であろう。

 一方で、「法令」とは正当な社会の要請が踏みにじられてしまってから制定の必要性が求められ(「立法事実」の発生)、それから国会審議を経て、法律として制定されたり、行政により政省令として規定されたりするものである。したがって、法令は人々の期待や社会の要請に遅れていることが通例である。それ故に、法令を先取りして企業が行動しなければ、コンプライアンスを満足したとは言えない。法令ができてからそれを守るのは当たり前で、守らないのは反社会的集団である。企業は仮に法令が不備であっても公正な経営理念に基づいて、自律的に適切な経営を行わなければならない。

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(くぼり・ひであき)

日比谷パーク法律事務所代表弁護士、桐蔭法科大学院教授。
1944年生まれ。1967年司法試験合格。1968年東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。(森綜合法律事務所入所)
2001年度第二東京弁護士会会長、日本弁護士連合会副会長。
2004年~2015年 大宮法科大学院大学教授。
現在、金融庁総合政策局参事、日本取引所グループ社外取締役、第三者委員会報告書格付け委員会委員長等を務める。
その他、金融庁顧問、野村ホールディングス社外取締役、日本取引所自主規制法人外部理事等を歴任し、不二家、NHK、ゼンショーホールディングス等多数の第三者委員会の委員、委員長も務めた。

日比谷パーク法律事務所 http://www.hibiyapark.net/
所属する弁護士がそれぞれコーポレートガバナンス等の会社法、M&A、特許法・著作権法等の知的財産権法、ファイナンス法、スポーツ法、システム開発を含むデジタル法、紛争処理などの得意分野に精通し、各分野のトップランナーとして「少数精鋭」と呼ばれるにふさわしいリーガル・サービスを提供するブティック型ファーム。

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