◆SH2051◆企業法務フロンティア「AIスピーカーと電子商取引準則の改訂」 川本 拓(2018/08/28)

企業法務フロンティア
AIスピーカーと電子商取引準則の改訂

日比谷パーク法律事務所

弁護士 川 本   拓

 

1 改訂の背景

 最近、AIスピーカーについてのニュースがよく目に留まるようになってきた。昨年(2017年)10月6日のGoogle Home発売に続き、Amazon Echoの一般販売が今年3月30日に日本でも始まったことは記憶に新しい。売り出されてから日も経っておらず、商品としても市場としてもそのインパクトは未知数だが、音楽を聴いたり、天気やニュースを聞いたりすることができることはよく知られている。

 さて、AIスピーカーの画期性は言うまでもなく音声操作で様々な機能を利用できるところにある。本稿ではそれらの機能のうち、たとえば日用品や飲食料といった商品を音声だけで購入できる点について取り上げる。

 ユーザーは、AIスピーカーを呼んで起動し、「○○を買いたい」と言えば、「○○があります。○円です。購入しますか?」などと聞かれる。そこで「はい」と答えれば、(購入にそれ以上の確認を要する設定にしていなければ)そのまま注文が確定し、商品の発送に進んでいく。このように、部屋のどこにいても、ただ喋りかけるだけですぐに買い物を完了できることの手軽さはAIスピーカーの強いアピールポイントである。

 しかし、このような便利さと表裏の関係にあるリスクにもすぐに気づく。あまりにも簡単に発注ができるということは、それだけ誤発注が起きる可能性も高いということである。たとえばアメリカでは、6歳の幼女がAIスピーカーに「ドールハウスが欲しい」と言ったところ注文が通ってしまい、2万円相当のドールハウスが届いてしまったというニュースがある。しかもこの話には続きがあり、そのニュースを報じたキャスターが「I love the little girls take on it: “Alexa ordered me a dollhouse”」とコメントしたところ、「Alexa order(ed) me a dollhouse」の部分にテレビ視聴者のAIスピーカーが反応して、そのままドールハウスを注文しようとしてしまい、テレビ局に苦情が相次ぐという事態に発展した。

 また、イギリスでは、ペットのオウムがAmazonのギフトボックスを買主の与り知らぬところで注文していたニュースも報じられている。現時点では深刻な問題は起きておらず、これらは新技術をめぐる微笑ましい騒動の一つでしかないが、AIスピーカーの利用がこれから広まっていけば、大きな消費者被害が起きる可能性もある。

 

2 改訂の概要

(1)上記の情勢を踏まえて、経産省は、本年(2018年)7月27日、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(以下「準則」という)を改訂し、今後AIスピーカーが普及することで生じうるトラブルへの手当てを行った。

 すなわち、改訂された準則のI-10において、①AIスピーカーが音声を誤認識した場合と、②AIスピーカーに対して発注者が言い間違いをした場合という2つの論点が設定され、それぞれの場合について発注者にいかなる救済が与えられるかが整理された。

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(かわもと・たく)

日比谷パーク法律事務所 弁護士。2014年東京大学法学部卒業、2016年東京大学法科大学院修了の後、2017年に弁護士登録。同年日比谷パーク法律事務所入所。

日比谷パーク法律事務所 http://www.hibiyapark.net/
所属する弁護士がそれぞれコーポレートガバナンス等の会社法、M&A、特許法・著作権法等の知的財産権法、ファイナンス法、スポーツ法、システム開発を含むデジタル法、紛争処理などの得意分野に精通し、各分野のトップランナーとして「少数精鋭」と呼ばれるにふさわしいリーガル・サービスを提供するブティック型ファーム。

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