◆SH2001◆弁護士の就職と転職Q&A Q50「アソシエイトが転職を機にパートナーに昇格する方法はあるか?」 西田 章(2018/07/30)

弁護士の就職と転職Q&A

Q50「アソシエイトが転職を機にパートナーに昇格する方法はあるか?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 ジュニア・アソシエイトの転職理由の典型例が「ハードワークから逃れたい」であるのに対して、シニア・アソシエイトの転職活動の契機は、「パートナー審査に落とされた」が典型例です。これを「事務所から自分は必要とされていない」というメッセージとして受け止めると、「他に自分を必要とする事務所があるのではないか」と考えます。しかし、転職活動をして初めて「他の事務所に移籍しても、アソシエイトのままなのか? 移籍後の事務所でもパートナー審査に通過するための下積みが待っているのか?」という問題に直面します。そして、一方では、現事務所で再度のパートナー審査を受けるために、留年又はカウンセル・ポストでの待機を選ぶ人もいれば、他方では、独立の道を選ぶ人も出て来ます。

 

1 問題の所在

 アソシエイトの仕事の延長線上に、パートナーがあるわけではありません。アソシエイトは、事務所案件の下請けが仕事ですが、パートナーの仕事のメインは「依頼者からの受注」に軸足があるからです。

 この点、伝統的な個人事務所やその集合体である「経費共同」型事務所では、「勤務弁護士(イソ弁)」であっても、「事務所業務の下請け」だけでなく、「個人事件=自己が元請けした業務」も並行して受任しているので、自己の売上げを少しずつ積み重ねることができました。そして、「パートナー昇進=下請けたる身分を捨てて、経費を負担する立場になる」ことを意味しています。ここでは、「パートナー昇進基準」は、(弁護士としての仕事の質よりも)「事務所運営の経費を分担できるだけの売上げを立てられるか?」に力点が置かれています。

 これに対して、大規模事務所に代表される「収支共同」型事務所では、アソシエイト時代には、個人事件で小遣い稼ぎをすることよりも、「まずは専門性を磨いて、事務所の名前に恥ずかしくない仕事ができるようになること」が先決であり、「営業力は、パートナーになってから開花させること」が求められています。ここでは、「パートナー昇進基準」は、過去の売上げ実績よりも、「事務所の経営戦略上、こいつにパートナーの肩書きを与えて、これからの営業に期待できそうか? 事務所の評判を落とさないか?」に力点が置かれてきます。

 それでは、法律事務所は、外部からの「パートナー」ポストへの弁護士の受入れに際して、どのような審査を行っており、その中で「現在の肩書き(アソシエイトか? パートナーか?)」はどれだけ決定的な要素になるのか。それらは、移籍を考えるシニア・アソシエイトには、重要な関心事となります。

 

2 対応指針

 外部的には「パートナー」という名称を表示していても、事務所毎に様々な実態のパートナーが存在します。共同事務所の外観を有していても、実質的に「ひとりボス弁」の事務所であれば、ボスが「どうしてもこいつを採りたい」と思ってくれたら、「実質的には給料を与えるアソシエイトでも、パートナーという肩書きも与えるのでうちに来てもらいたい」と勧誘することもあります。

 他方、収支共同型の事務所で、実質的にも、パートナー間の合議で採用が決まるような場合には、「なぜ、他事務所のアソシエイトをうちでパートナーとして採用するのか? うちのアソシエイトにも示しがつかない」として、「いきなりパートナー」には否定的で、どんなに優秀な候補者に関しても、「まずは、カウンセルとして様子を見る」という対応に落ち着きがちです。

 経費共同型の事務所であれば、(仕事のクオリティを相応に信頼できるならば)「給料は支払えない。経費をいくら負担してくれるのか?」への回答によって「パートナー」ポストを提供することもあります。さらに、本人が経費負担の発想を突き詰めて行くと、「独立してしまえば、パートナーどころか、代表弁護士の地位を得られる」という方向を真剣に考えることになります。

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(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 




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