◆SH1844◆債権法改正後の民法の未来28 不実表示・相手方により生じた動機の錯誤(4) 上田 純(2018/05/17)

債権法改正後の民法の未来 28
不実表示・相手方により生じた動機の錯誤(4)

久保井総合法律事務所

弁護士 上 田   純

 

5 今後の参考になる議論

(六) 要件及び効果

(1) 立法提案

ⅰ 民法(債権法)改正検討委員会案[1]

【1.5.15】(不実表示)

<1> 相手方に対する意思表示について、表意者の意思表示をするか否かの判断に通常影響を及ぼすべき事項につき相手方が事実と異なることを表示したために表意者がその事実を誤って認識し、それによって意思表示をした場合は、その意思表示は取り消すことができる。

<2> 相手方に対する意思表示について、表意者の意思表示をするか否かの判断に通常影響を及ぼすべき事項につき第三者が事実と異なることを表示したために表意者がその事実を誤って認識し、それによって意思表示をした場合は、次のいずれかに該当するときに限り、その意思表示は取り消すことができる。

 <ア> 当該第三者が相手方の代理人その他その行為につき相手方が責任を負うべき者であるとき。

 <イ> 表意者が意思表示をする際に、当該第三者が表意者に事実と異なることを表示したことを相手方が知っていたとき、又は、知ることができたとき。

<3> <1><2>による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者に対抗することができない。

  1. * 消費者契約法4条2項に該当する場合(不利益事実の不告知)は、ここでいう「不実表示」に当たり、この提案(【1.5.15】)により取消しが認められるが、その旨を明示的に確認しておく方が望ましいという考え方もある。

 

ⅱ 民法改正研究会案[2]

56条(不実表示及び情報の不提供)

① 相手方が提供した事実と異なる情報に基づき意思表示をした者は,それに基づく法律行為を取り消すことができる。ただし,提供された情報が事実であるか否かが,通常であればその種の法律行為をする者の意思決定に重大な影響を及ぼすものでないときは,この限りでない。

② 故意に,信義誠実の原則に反して提供すべきである情報を提供せず,又はなすべき説明をせず,それにより相手方に意思表示をさせたときは,前項の不実表示があったものとみなす。

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(うえだ・じゅん)

久保井総合法律事務所 パートナー弁護士 j-ueda@kuboi-law.gr.jp

金融、不動産、M&A、事業再生、債権回収、BtoC、相続、訴訟等を幅広く取り扱い、「金融機関の融資拒絶をめぐる法的諸問題」(金融法務事情1993号)、『多様化する事業再生』(共著・商事法務、2017年)、『コンメンタール消費者契約法〔第2版増補版〕』(共著・商事法務、2015年)等各分野の執筆や講演歴多数。

1992年千葉県立千葉高等学校卒業、1996年京都大学法学部卒業、1998年弁護士登録(大阪弁護士会)、2008年近畿大学法科大学院非常勤講師。現在、司法試験考査委員・予備試験考査委員(民法)、大阪弁護士会司法委員会副委員長・民法商法部会長、同民事訴訟法の運用に関する協議会副座長、金融法学会会員、日本民事訴訟法学会会員等。

久保井総合法律事務所 http://www.kuboi-law.gr.jp/

 

 




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