◆SH1755◆弁護士の就職と転職Q&A Q40「弁護士仲間で飲みに行くよりも、依頼者を接待すべきなのか?」 西田 章(2018/04/09)

弁護士の就職と転職Q&A

Q40「弁護士仲間で飲みに行くよりも、依頼者を接待すべきなのか?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 最近では、若手弁護士向けに「顧客開拓セミナー」が開催されるようになりました。その手のセミナーに参加した若手から「『同業者間の内輪でつるんでいないで、外に出て潜在的依頼者を飲みに誘え』と言われたのですが、どう思いますか」との質問を受けました。確かに、企業法務の世界でも、古くから「顧問料を貰っている企業には、担当者が自腹では行かない高級店に偶には連れて行ってご馳走してあげることで還元する」という作法も言い伝えられてきました。ただ、弁護士同士のネットワークの意味は依然として存在していますし、担当者も、社内の倫理規程上、接待を受けにくくもなっています。

 

1 問題の所在

 司法修習20期代までの先生方が企業法務の基礎を築かれた後に、30期代で独立した弁護士の先生方と話していると、「弁護士の最大の依頼者は先輩弁護士である」との格言をよく聞かされます。確かに、企業法務の世界でも「当事務所ではコンフリクトがあるので、受けられない」という場面は存在します。また、大規模な総合事務所でない限りは、「この分野の相談を自分は得意としていないので、顧問先にこの分野に強い弁護士を紹介したい」ということも生じます。そういう意味では、「弁護士間のネットワーク」の営業上のメリットは、現在でも、失われていません。ただ、そのネットワークがうまく機能しづらくなっていることも事実です。まず、依頼者側からの弁護士費用のディスカウント圧力も強くなってきて、「面倒で採算に合わない案件を後輩に任せたい」という事情もあります。また、弁護士職務基本規程上、依頼者紹介には対価を支払うことも貰うこともできないとはされていますが、いつも「紹介するばかり」の立場にいたら、「見返りがないこと」に不愉快な気持ちが募り、紹介関係は長続きしません。

 また、「依頼者企業の担当者への接待」も、以前ほどは効果的ではなくなりつつあります。まず、そもそも論として「外部弁護士と飲みに行けることがありがたい」と考える担当者は減りつつあります。かつては、「弁護士は尊敬すべき相手であり、教えを乞うべき存在」だったかもしれませんが、社内弁護士が広まったことは、「外部弁護士=適材適所で利用すべきベンダー」という感覚も同時に広めています。また、企業法務の弁護士の層が厚くなってきており、「案件に応じて適切な先を選ばなければならない」という意識が強まっています。そのため、「ご馳走してくれたからといって依頼できるわけではない」というのが担当者の本音です。

 

2 対応指針

 弁護士ネットワークが営業に生きるのは、他の弁護士との間に「取扱業務」を棲み分けられる場合です。依頼者から相談を受けた弁護士が「自分では受任できない」と判断した場合に、「他に信頼できる弁護士」を紹介することも、依頼者に対するサービスの一環となります。ただ、優秀すぎる同業者に依頼者を奪われたら困るので、紹介を受けた弁護士としては、紹介元の弁護士との間の信頼関係を維持する工夫は必要となります。

 また、依頼者企業の担当者と、仕事以外でもコミュニケーションを取ることは、営業上のメリットがあります。複数の外部弁護士を使い分けている企業においても、担当者としては、法律問題が生じた際には、まずは「電話しやすい先」の弁護士に相談しがちです。弁護士としても、入口段階の対応では費用を請求できなくとも、早期に相談を受けていることは、正式な依頼先を決める段階で、他に競合する事務所よりも効果的な提案をする事前準備につながります。

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(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 

 




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