◆SH1756◆企業法務フロンティア「契約英語の基礎」(1) 原 秋彦(2018/04/09)

企業法務フロンティア
契約英語の基礎(1)

日比谷パーク法律事務所

弁護士 原   秋 彦

 

1. はじめに

 「英文契約書の読み方」という類いの出版物は巷に溢れており、<まずは英文契約書を読み取れるようになりたい>という読者にとっての意味では、本稿も、英文契約書に特有あるいは固有の英語表現についての解説を試みるものには違いない。けれども、紙幅上の制約を考慮し、英文契約書における表現がどのような事情からわかりづらく読みづらいものになっているのかという観点を中心に、筆者が英文契約書を扱う駆け出しの弁護士の頃からその読解・理解のうえで難儀や苦労をした思いのある表現にできるだけ焦点を絞って、読者の参考に供するように試みたい。

 

2.「契約書」を意味する用語

  • contract(契約;契約書):

 緩やかな定義によれば、「an enforceable agreement between two or more parties to do or not to do a thing or set of things」(Black’s Law Dictionary, 8th Ed. 342)とあり、「agreement」という用語よりも狭義に用いられると言っていい。

  • agreement(契約;契約書;合意事項;合意書):

 それに対して、「agreement」という言葉は、例えば「Non-disclosure Agreement (NDA)」(非開示合意書)、「definitive agreement」(確定的契約)というように、「契約書」という意味合いで用いられることもある一方で、「entire agreement」(合意の全て)というように、広義に「合意事項」という意味合いで使われることもある。

  • 「memorandum」(「覚書」)という言葉は、「Memorandum of Agreement」(合意覚書)、「Memorandum of Understanding」(了解事項覚書)といった使い方をする言葉で、備忘のための覚書といったニュアンスがあるが、契約書としての拘束力がないという意味合いとは限らない。
     
  • 「undertaking」(「引受事項」):

 これは、「Letter of Undertaking」(引受事項書簡;念書)といった使い方をする。両当事者の調印文書というよりは一方当事者による差入れ文書という印象があるが、典型的に言えば、製造請負(受託)業者(contractor)が発注業者から請負業務を引き受ける際の横流し(diversion)の禁止といった付随義務の負担文書という例に見られるように、これまた、契約書としての拘束力がないという意味合いとは限らない。

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(はら・あきひこ)

佐賀県生まれ。1978年東大法学部卒。1980年弁護士登録(第二東京弁護士会)。1984年米国コロンビア・ロースクール修士号取得。1985年ニューヨーク州弁護士登録。現在日比谷パーク法律事務所パートナー弁護士。2002年FIFAワールドカップの日本招致委員会及び組織委員会の法律顧問、日本サッカー協会監査コンプライアンス委員長を務めたほか、現在、スイス国ローザンヌのスポーツ仲裁裁判所(CAS)仲裁人等を務める。『ビジネス契約書の起案・検討のしかた』、『ビジネス法務基本用語和英辞典』、『ビジネス法務英文用語集』、『法律実務家が知っておきたい作法』(以上、商事法務)。

 

日比谷パーク法律事務所 http://www.hibiyapark.net/

所属する弁護士がそれぞれコーポレートガバナンス等の会社法、M&A、特許法・著作権法等の知的財産権法、ファイナンス法、スポーツ法、システム開発を含むデジタル法、紛争処理などの得意分野に精通し、各分野のトップランナーとして「少数精鋭」と呼ばれるにふさわしいリーガル・サービスを提供するブティック型ファーム。

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