◆SH1699◆弁護士の就職と転職Q&A Q37「職務経歴書に取扱案件をどこまで具体的に書くべきか?」 西田 章(2018/03/12)

弁護士の就職と転職Q&A

Q37「職務経歴書に取扱案件をどこまで具体的に書くべきか?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 初めての転職活動で最初に悩むのが「職務経歴書」の作成です。就活で作成したエントリーシートを基にすれば、履歴書はすぐに完成しますが、職務経歴書に「取扱案件」をどう書くかはわかりません。サラリーマンの転職マニュアルの書式を利用すれば、一応、形式的にはそれらしい書面を作ることができますが、弁護士の転職活動用としてはピントが外れてしまいます。そこで、今回は、職務経歴書の書き方を取り上げてみたいと思います。

 

1 問題の所在

 新卒市場で「潜在的能力の高さ(及びそれを推認させる学歴)」が重視されるのとは異なり、中途市場では「即戦力としての適性(≒経験値)」が重視されるようになります。そのため、書類選考での審査は、年次が上がるにつれて、その比重が「履歴書」から「職務経歴書」へと移ってきます(私は、両者を統合した「経歴書」の作成をお勧めしています)。

 職務経歴書の書き方については、「できるだけ詳しいほうがいい」(詳細説)と「できるだけ簡素なほうがいい」(簡素説)の対立がありますが、私は(提出先が法律事務所の場合には)詳細説を支持しています。司法試験合格順位やTOEFLのような客観的指標で卓越した数値を持っていれば別ですが、平凡な経歴しかなければ、主張立証責任は志願者に課されていますので、「採用担当者の目に留めてもらえなければ、書類選考で落ちる」からです。誇張した記載事項に対しては、採用担当者から「ほんのちょっと端っこにしか関与していない案件をさも自分がすべて取り仕切ったように書いて図々しい」と批判されることもあります。ただ、そのように批判される事例では、控えめの職務経歴書を出していたら、面接にも進めずに書類選考で落ちていたはずです(面接に進めるほうが質疑応答の経験を積めた分だけ転職活動ではプラスです)。なので「図々しいと思われたくない」という理由だけで謙虚な書面を作成するメリットはありません。

 ただ、職務経歴書を受け取った応募先の採用担当者から「依頼者の利益を無視して自分が関与した案件を偉そうに自慢している」「依頼者に対する守秘義務をどう考えているのか?」という批判を受けるのは避けなければなりません。そこで、守秘義務違反を問われない範囲で、どのようにして自分の経験をアピールするかが課題となります。

 

2 対応指針

 手控え資料としては、固有名詞入りの詳細な職務経歴書を作っておくことは有益です(取扱案件を棚卸した自己分析の契機にもなります)。そこから、提出のタイミングと提出先に応じて、記載することに支障がある案件を抽象化したり、間引く作業をすることになります。具体的には「上場企業の係属中の未公表案件は削除」「終了したけど非公表案件は匿名化」などの作業を行います。依頼者名を書けない場合には、依頼者の属性と案件の種類に加えて、「指導に厳しいパートナーの下で修行を積んだこと」を伝えるために、「担当案件の主任弁護士名」を追記する工夫も考えられます。

 職務経歴書は、それ自体で完結した書面である必要はありません。採用担当者に「会って話を聞いてみたい」と思わせることがポイントです。面接に呼んでもらうことができたら、面接官の雰囲気も探りながら、職務経歴書に匿名ベースで記載した案件を具体的にイメージして、より突っ込んだ会話も、口頭ベースでは頻繁に行われています。

続きはこちらから

バックナンバーはこちらから

 

(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 

 




メールで情報をお届けします
(毎週火曜日・金曜日)