◆SH1682◆弁護士の就職と転職Q&A Q36「不祥事を起こすような企業に転職を勧められるのか?」 西田 章(2018/03/05)

弁護士の就職と転職Q&A

Q36「不祥事を起こすような企業に転職を勧められるのか?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 企業法務系弁護士に「どのような仕事をしたいか?」と問えば、その回答は、「優良なクライアントのために働きたい」というものと、「面白い案件に関与したい」というものに分かれます。2つのニーズは、一致することもありますが、正反対に作用することもあります。後者の代表例が「問題企業のために働くか」という場面で現れます。今回は、不祥事を起こした企業への転職をテーマに取り上げてみたいと思います。

 

1 問題の所在

 弁護士のキャリアは、一方では、「どのような組織に所属して、その組織内でどういう地位で働いていたか」という「履歴書」的視点で計られ、他方では、「具体的にどのような案件を取り扱って来たか」という「職務経歴書」的視点でも計られます。

 「履歴書」的視点からは、「一流の組織に所属して、遅れずに昇進して、職務分掌の範囲を広げてきた」という「汚点のない経歴」が最高評価を得ることになります。法律事務所で言えば、大手法律事務所の生え抜きのシニア・パートナーとか、社内弁護士で言えば、財閥系総合商社の部門長が理想的キャリアの典型例になります。「ミスが失点につながる、減点主義的な物差し」での評価を競うことになります。

 これに対して、「職務経歴書」的視点からは、「難しい案件を混乱した状態で受任して、それを解決に導いた」という「修羅場経験」が評価されます。そして、「あの問題案件を収めた方ならば、今度の問題案件も任せられるかもしれない」という期待を抱かせるため、「加点主義的な物差し」で評価される世界です。

 これまでは、社内弁護士のキャリアは、「履歴書」的視点で評価されがちでしたが、外部弁護士のキャリアは、「職務経歴書」的視点で取扱案件の実績で評価されてきました。例えば、倒産弁護士にとっては、「負債総額が大きく、債権者との対立が激しい事件ほど、その利害調整を果たした時の功績は大きい」と位置付けられてきました。ただ、これは、管財人団として、又は、債務者代理人としての関与です。「社内弁護士として、問題企業の一社員になれるか?」といえば、これを受諾できる倒産弁護士は多くいません。とすれば、危機管理の局面でも、外部弁護士としては問題企業を代理することはあっても、問題企業の組織の一員になることは躊躇すべきなのでしょうか。

 

2 対応指針

 社員になれば、社内の指揮命令系統に組み込まれてしまうため、経営陣を信頼できなければ、転職すべきではありません。また、会社の本業(商品やサービス)に社会的有用性を見出せなければ、逆境の中での勤務を続ける意欲を保持することもできません。逆に、それら前提条件が満たされるならば、「会社が再生した暁には、自分の理想とする法務部門を構築できること」を目標として転職することも検討に値します。

 また、混乱時を共に闘った上司・同僚・外部アドバイザーとの間には、特別な信頼関係が築かれますので、(転職市場に依らずに)これら人脈を通じて次の職に誘われることもあります。

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(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 

 




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