◆SH1594◆弁護士の就職と転職Q&A Q31「法律事務所がインハウスの応募を門前払いするのは時代遅れなのか?」 西田 章(2018/01/22)

弁護士の就職と転職Q&A

Q31「法律事務所がインハウスの応募を門前払いするのは時代遅れなのか?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 社内弁護士の拡大の背景には、「いきなりインハウス」(修習を終えて、法律事務所を経ずに、企業に就職した有資格者)の数の増加が寄与しています。こうした「いきなりインハウス」の中には、「やはり一度は法律事務所でも働いてみたい」と希望して、法律事務所の中途採用に応募する人も少なくありません。これまでは、書類選考で門前払いされることが通例でしたが、最近は、法律事務所側の対応にも変化が見られるようになってきました。その背景と考え方を整理してみたいと思います。

 

1 問題の所在

 法律事務所におけるアソシエイトの中途採用で、理想の候補者とは「当事務所と同等以上のレベルの法律事務所で基礎的訓練を積んできたが、何らかの合理的理由で現事務所を辞めようとしてる弁護士」です。しかし、今は、大手法律事務所でパートナー昇進要件を緩和したり、「アップ・オア・アウト」を捨てて、パートナーとならなくとも、優秀なアソシエイトには「カウンセル」として長く働ける人事方針を打ち出したことが功を奏して、これら事務所からの転職希望者が減っています。

 意中の候補者からの応募を得られない状況にしびれを切らした中規模以下の事務所にとっては、「理想的な経歴を持つ候補者を追い求めても仕方がない」「現実的な選択肢の中から、うちで活躍してくれそうな候補者がいるならば、掘り出したい」と考えて、書類選考の門戸を広げつつあります。そして、これまでは、書類選考で門前払いされていた「いきなりインハウス」でも、検討の対象とされることが増えて来ました。実際に、インハウスから法律事務所に移籍して活躍する実例が現れて来たことも、その流れを後押ししています。

 インハウスの応募者は、「サラリーマン経験を通じて、優れたコミュニケーション能力を身に付けました」とアピールしがちですが、法律事務所にとっては、「まずは、アソシエイトとして、きっちりリサーチをしてドキュメンテーションができることが先決」「基礎的な能力も身に付けていない弁護士が営業を語るべきではない」という教育方針を捨てるわけにはいきません。また、いくら人手不足でも、インハウスの経験年数をそのまま引き継いで、シニア・アソシエイトとして採用することが難しいことには変わりはありません。そこで、インハウスの応募者を門前払いにはしなくとも、どのような視点を持って選考を行うべきかに関心が移ってきています。

 

2 対応指針

 法律事務所は、インハウス経験をそのまま活かせる職場ではないため、本人には「新人からやり直す」という覚悟と「自分よりも修習期が若い先輩からの助言にも耳を傾けられる」という素直さが求められます。しかし、これは、インハウスからの採用に限った要件ではありません。別事務所で、自ら裁量をもって仕事を回している弁護士に、あらたに、当事務所の「お作法」を教え直すほうが困難なことも多いです。

 「覚悟」や「素直さ」は、履歴書だけでは判断できない内面的要素ですので、採用選考には面接での目利きが問われることになります。

 また、候補者よりも修習期が若い先輩アソシエイトが働いている場合には、「新人からやり直します」という気持ちに加えて、「先輩アソシエイトよりも秀でた特技」(例えば、英語力等)があると、「アソシエイトとしては、年次相応の経験が足りなくとも、この分野では一目置いてもらえる」という関係が成り立つので、修習期の逆転現象などの溝を埋めやすくなります。

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(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 



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