◆SH1560◆実学・企業法務(第103回) 齋藤憲道(2017/12/21)
実学・企業法務(第103回)
第3章 会社全体で一元的に構築する経営管理の仕組み
同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー
齋 藤 憲 道
Ⅳ 会社制度の変遷[1]
取締役・取締役会・監査役等には、会社の事業に関して発生する事故や不祥事を未然に防止することが期待され、大きな不祥事が発生するたびに会社法、金融商品取引法、証券取引所規則等が改正されて、コーポレート・ガバナンス、内部統制システム、リスク・マネジメント等が強化されてきた。
以下に、その変遷を示すので、今後の制度変更の方向性を考えるためのヒントにして頂きたい。
次の点に着目すると、大きな潮流が見えるだろう。
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○ 会社の機関
・会社の機構の設計の自由度拡大(その分、自己責任が増大)
・取締役、監査役の資格要件
取締役・監査役の株主要件の廃止(会社の所有と経営の分離)、社外役員の増加
・取締役及び取締役会の業務執行権限の拡大
取締役会の設置、株主総会決議事項の減少、剰余金配当の実施
・監査機能の強化
権限の強化、任期の伸長、会計監査人制度の導入、委員会制度の導入、株主総会決議で選任
- ○ 情報開示の促進
・開示する情報の種類・量の増大、範囲の拡大、情報の適切性の確保
- ○ 法令の規律と、ソフト・ローの規律の役割分担
・会社法、金融商品取引法、証券取引所規則等の役割分担と、規律の一元的調整
筆者は、今後、次の検討が重要になると考えている。
- ○ 現行法の機能強化と簡素化
・会社法、金融商品取引法、証券取引所規則等の役割分担の簡明化と重複領域の調整
- ○ 企業価値創造に貢献する簡素で効果的な経営管理システムの構築
・企業価値創造に貢献する管理システムのあり方(法令以外の検討事項が多い)
・情報開示の方法の簡素化(国・証券取引所等の制度を含めて一元的に検討)
- ○ 監査機関(監査役等)に求められる資質の明確化とスキルの強化
・監査役等と会計監査人の役割分担のあり方
・監査役等が備えるべき資質・スキル
・内部通報制度のさらなる活用(一部、義務化を含む)
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(さいとう・のりみち)
1971年東京大学法学部卒業。同年松下電器産業㈱に入社し、営業、経理、経営企画、法務の業務を担当。松下電子部品㈱経営企画室長、松下電器産業㈱法務本部法務部長、JVC・ケンウッド・ホールディングス㈱監査役等を経て、2009年パナソニック㈱を退職。損害保険ジャパン日本興亜㈱ 業務品質・コンプライアンス委員会委員長を歴任。
また、内閣府消費者委員会委員(2015年秋退任)、消費者安全調査委員会臨時委員(現)、製品事故判定第三者委員会合同会議議長(現。消費者庁と経済産業省合同)、国民生活センター紛争解決委員会委員(現)、経済産業省産業構造審議会臨時委員、神戸市公正職務審査会委員(現)