◆SH1552◆弁護士の就職と転職Q&A Q28「社外取締役候補者に選ばれる弁護士像とは?」 西田 章(2017/12/18)

弁護士の就職と転職Q&A

Q28「社外取締役候補者に選ばれる弁護士像とは?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 現在の司法修習生の中には、キャリアの到達点に「上場企業の取締役になりたい」という声が聞かれるようになってきました。その背景には、①弁護士ドットコム株式会社の上場に代表される「弁護士起業家」の成功と、②コーポレートガバナンス・コードに後押しされた「社外取締役弁護士」の広がりがありますが、両者を混同している修習生も見られます。そこで、今回は、起業家とは異なり、社外取締役候補に選ばれやすい条件を、人材紹介業者の視点から整理してみたいと思います。

 

1 問題の所在

 弁護士が「企業の経営」に興味を抱くきっかけは、かつては、作家の高杉良氏が大沢商会の会社更生事件を基に描いたと言われる小説『会社蘇生』(講談社、1987)が有名でした。若手弁護士から「弁護士の仕事で、なにがいちばんやり甲斐があるんでしょうか」と問われて、三宅省三弁護士がモデルと言われる宮野英一郎は、間髪を入れずに「そりゃあ、更生会社の保全管理人をやることですよ」と即答し「難事件を解決したり、法廷で検事をやり込めたりしたときなども、弁護士冥利に尽きると思うことはあるでしょうが、仕事のし甲斐があるということでしたら、保全管理人がいちばんじゃないですか」と語り、これに対して同期弁護士から「失敗したら惨めでしょうね」との指摘を受けても、「しかし、いきなりパラシュートで舞い降りて、更生会社の全権限を掌握し、更生開始決定に導くという大きな仕事をできるんですから、身がひきしまるというか、あの緊張感なんともいえませんね。」と続ける冒頭シーンに憧れて倒産弁護士を目指した修習生は珍しくありませんでした。

 最近では、事業再生の局面よりも、ベンチャー起業家としての弁護士が注目を浴びています。弁護士ドットコムは、弁護士業務に関する情報提供のインフラを作り上げましたが、中国模倣品対策のコンサルティングファームであるIP FORWARDも、創業者弁護士の経産省出向時代の業務を発展させたサービスを提供しており、いずれも、起業家が弁護士業務で気付いた社会的問題を解決するためのサービスを生み出しています。

 このように、弁護士自身が企業のCEOになる場合には、自ら将来ビジョンを創り上げて、それを社員と共有して率いていくリーダーシップが求められますが、社外取締役は、非執行の非常勤に過ぎません。また、会社経営に伴うリーガルリスクは、法務部が所管していますし、専門的知見は外部の顧問弁護士からリーガルアドバイスを求めることになります。とすれば、社外取締役に声をかけられるのは、どのような弁護士なのか。定説があるわけではないために、紹介業者にも意見が求められます。

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(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 




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