◆SH1541◆弁護士の就職と転職Q&A Q27「採用のミスマッチは防げるのか?」 西田 章(2017/12/11)

弁護士の就職と転職Q&A

Q27「採用のミスマッチは防げるのか?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 人材紹介業者を続けていて、もっとも心苦しいことのひとつが、転職先を紹介した弁護士から再度の転職相談を受けることです。転職先で、プロジェクトを成し遂げたとか、留学から戻って次のステージに進む、ということならば、まったく構わないのですが、「巻き戻したい」という遡及効を期待されてしまうと、ミスマッチにより、本人のキャリアにも、事務所の発展にも「回り道」をさせてしまう責任を感じます。そこで、今回は、採用のミスマッチの対策について整理してみたいと思います。

 

1 問題の所在

 採用した弁護士が使えなかった、という失敗談はたくさんの法律事務所で耳にします。その経験から、書面審査の要件を厳しくして、司法試験の合格順位の足切り水準を上げてみたり、独自のペーパーテストを課したり、小論文を書かせてみたりする先も増えています。しかし、優秀な人ほど、「他にも選択肢がある」ので、面倒なプロセスに付き合わされるのを嫌って、応募を敬遠されてしまう傾向もあります。採用プロセスの重層化は、「優秀でない人を避ける」ことには役立っても、「優秀な人を惹きつける」ためのツールにはなっていません。

 また、職場での「パフォーマンス」は、「能力」と「やる気」の掛け算によって成り立っているので、「能力不足」と思われている事案も、実は、「本人が何らかの理由により、仕事に対するやる気を失う」というイベントが先行しているケースも多く見受けられます。

 「やる気」を失わせる典型例には、「業務内容(依頼者属性を含む)のミスマッチ」、「ボスとの相性のミスマッチ」、「労働条件(報酬水準を含む)のミスマッチ」が挙げられます。応募者は、採用選考時には、「やる気を示さなければ、オファーを貰うことができない」ので、まずは、ミスマッチのリスクを度外視して、やる気を「盛って」アピールすることで、内定を獲りに行くことが「就活用テクニック」となります(そして、内定を取得して選択肢を得た後に、少し慎重に検討して受諾するかどうかを判断することになります)。

 採用側としては、このようなミスマッチを回避するために、「できれば、まずは、試用期間を設けたい」と考えがちですが、その申し出は、優秀な候補者を逃すリスクを孕んでいます(仮にそのまま入所することになっても、本人の勤労意欲を減退させることもあります)。そこで、採用側は、ミスマッチのリスクにどのように向き合うべきかに頭を悩ませることになります。

 

2 対応指針

 勤務開始から一定期間は、性善説を採用して、ボス/上司の側でも、本人に貢献できそうな仕事を与えて、本人に負荷の少ない仕事の進め方に配慮することが求められます。しかし、所定の期間を経過して、ミスマッチを認定せざるを得ない場合には、プロフェッショナル業務においては、非効率な関係を継続するよりも、発展的な解消を促すことが正当化されるべきです(できるだけ良い転職先を確保してもらい、転職後にも元職場の悪評を広めないようなコミュニケーションを交わせる関係を維持すべきです)。

 「うちで永続的に働く」という意味でのマッチングは保証できなくとも、「うちを辞めても、どこかで適切に活躍してくれる」という意味でのマッチングは確保したいところです。

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(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 




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