◆SH1527◆弁護士の就職と転職Q&A Q26「危機管理をやりたければ、まず検察に行くべきなのか?」 西田 章(2017/12/04)

弁護士の就職と転職Q&A

Q26「危機管理をやりたければ、まず検察に行くべきなのか?

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 企業や団体で不祥事が発覚した場合に、企業等が自ら行う調査には外部弁護士が関与することが必須とみなされるようになってきました。法律事務所の側でも、一旦、受任してしまえば、フィーのディスカウントを求められることがない危機管理案件は、安心してビラブルのタイムを付けられる「ドル箱」という認識も定着して、大型案件には多数のアソシエイトが動員されています。ただ、記者会見等でメディアに露出するのは「ヤメ検」弁護士であることから、修習生からは「危機管理をやりたければ、まず検察に入るべきなのか?」という質問を受けるようになりました。

 

1 問題の所在

 かつては、「企業法務」と言えば、組織法周りでは、会社の設立、株主総会・取締役会の運営など、契約法周りでは、契約書の作成・レビューなどの、いわゆる「ジェネラル・コーポレート」がイメージされていました。しかし、社内弁護士の増加も受けて、日常的に「条文と裁判例を頼りにすれば済むような法律相談」を外部事務所に依存する割合は減ってきています。そして、外部弁護士の主戦場は、「卓越した専門性」と「独立性」を売りにしたサービスに移行してきました。

 経営陣が営業利益の積み増しを狙って行うM&Aも、外部弁護士の活躍する場ではありますが、依頼者企業の経営企画部門が司令塔となるため、ベンダーである法律事務所のリーガルフィーも予算管理の一部に組み込まれてしまいます。

 これに対して、不祥事発覚後の事実調査では、経営陣もその裁量権の行使を控えさせられます。調査を委託された法律事務所は、予算制限なしに、徹底した仕事して、それに見合うフィーを請求することができるため、危機管理弁護士は「わが世の春」を謳歌してきました(以前は、第三者委員会に選ばれた弁護士が主体となった調査が行われていましたが、近時は、事務局を担う法律事務所が、委員の選定を含めて助言する事例が増えているように思われます)。

 ただ、現在、大型案件を受任している検察出身のシニア・パートナーは「検察で修行を積んで、その成果を法律事務所で発揮しているだけ」という見方もあります。そこで、若手にとっては、「法律事務所における修行だけでもプロジェクトをマネージするようなレベルまで成長できるのか?」「お客さんは検察経験がない自分を信じて依頼してくれるのか?」という疑問が生じます。

 

2 対応指針

 危機管理業務を担う上での検察経験のメリットは、実質的なものと形式的なものに分けられます。実質的には、関係者を尋問して記録化する経験値が高いと考えられています。また、形式的には、検察の要職を務めたという肩書は、調査結果の信頼性を担保するために役立つ、という信仰があります。

 他方、検察の現場経験を売りにする弁護士に対しては、「英語も法律論も不得手である」「ストーリー先にありきの調査となる」「ヒアリングが強圧的である」「辞めてきた組織との人脈は期待できない」との批判も向けられており、検察出身者がすべて高い評価を受けているわけではないことにも注意が必要です。

 依頼者企業との接点は、非「ヤメ検」が担うことも多いため、今後は、非「ヤメ検」と「ヤメ検」の連携が進むことになりそうです。

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(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 

 




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