◆SH1478◆弁護士の就職と転職Q&A Q22「なぜ弁護士が税理士・会計士と連携するのか?」 西田 章(2017/11/06)

弁護士の就職と転職Q&A

Q22「なぜ弁護士が税理士・会計士と連携するのか?

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 かつては、「弁護士は、士業の王様であり、他士業の軍門に下るのはプライドが許さない」という発想が強くありました。しかし、企業法務の業界でも寡占化が進み、若手弁護士の中には「クライアント企業を承継させてもらうために定年間際の先輩弁護士に取り入るぐらいならば、他士業と連携するほうが面白い」と考える者も現れてきました。今や、世界ビッグ4のアカウンティング・ファームのうち、3つが、そのファーム名を冠する弁護士法人を日本にも設立しています。今回は、そのようなアカウンティング・ファームとの連携の意味を推察してみたいと思います。

 

1 問題の所在

 日本で初めてアカウンティング・ファームのブランドを冠する法律事務所が現実に設立されたのは、2013年のことですが、過去にも、アカウンティング・ファームから法律事務所側への買収アプローチは続けられてきました。それが実現に至らなかったのは、アカウンティング・ファームから声をかけられるような優良事務所にとっては、アカウンティング・ファームの系列に属することによるメリットよりも、デメリットのほうが大きいという判断が大きかったものと思われます。

 デメリットとして、最もイメージしやすいのは、「監査法人とグループになった場合には、監査先企業を相手方とする紛争を代理することにコンフリクトが生じる」という問題です。現実に監査を担当していなくとも、潜在的には、クライアントとなる可能性があるならば、上場企業vs上場企業の紛争案件は原則として受けることができなくなってしまいます。「訴訟」「紛争解決」を仕事の幹に据えている弁護士にとっては受け入れがたい不自由であったことが推察されます。

 また、米国では、エンロン事件以降、「監査」と「アドバイザリー」の分離が徹底されています。そのため、米国で監査を担当している企業に対しては、グループを含めてアドバイザリー業務を引き受けることができない、という制約が生じます。これは、すでに、上場企業グループを顧問に抱えている弁護士にとっては受任できない制約だったものと思われます。

 ただ、「訴訟を専門としない」かつ「特に定まった上場企業クライアントを保持していない」という若手弁護士にとっては、これら制約は大きなデメリットにはなりません。それでは、税理士・会計士と連携することで、どのようなメリットがありうるのでしょうか。

 

2 対応指針

 アカウンティング・ファームとの連携で生まれるシナジーの典型例には、①税務調査・税務訴訟対応、②M&A、③人事労務、が考えられます。企業は、これら案件について、法律事務所よりも先に、税理士・会計士に相談するために、税理士・会計士と連携する弁護士は、外部弁護士に先立って案件に関与するチャンスが与えられます。しかし、企業も、ケースバイケースで最適の法律事務所を選ぶことを望むために、法律事務所としては、企業のニーズに応えられるだけのマンパワー・ノウハウ・専門性・料金設定等を備えていなければ、他事務所とのビューティーコンテストに勝ち残ることはできません。

続きはこちらから

バックナンバーはこちらから

 

(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 

 




メールで情報をお届けします
(毎週火曜日・金曜日)