◆SH1445◆欧州司法裁判所のインテル判決(1)EU競争法の域外適用 Wilko Van Weert 武藤まい(2017/10/19)

欧州司法裁判所のインテル判決

(1)EU競争法の域外適用

McDermott Will & Emery法律事務所

弁護士 Wilko Van Weert

弁護士 武 藤 ま い

 

はじめに

 欧州司法裁判所は、2017年9月6日、Intel Corporation Inc., v. European Commission事件における待望の判決(以下、「本判決」という。)を下し、欧州委員会決定を支持する旨の一般裁判所の2014年6月12日付判決を破棄した。欧州委員会は、2009年5月13日に、インテルコーポレーション(以下、「インテル」という。)に対し、同社のコンピューターメーカーに対するリベート及び資金提供はx86中央演算処理装置(以下、「CPU」という。)市場における支配的地位の濫用にあたるとして10億6000万ユーロの制裁金を科す決定を下していたものである。欧州司法裁判所は、事件を一般裁判所に差し戻しており、10億6000万ユーロの制裁金が取消し又は減額されるか否かは未だ明らかではない。しかしながら、本判決は、支配的地位にある事業者のみならず、そうでない事業者に対しても影響を与え得るEU競争法上の2つの論点につき重要な判断を下すもので、日本企業にとっても注目に値する。すなわち、欧州司法裁判所は、①EU競争法の適用につき限定的効果理論(qualified effects doctrine)を採用し、②欧州連合の機能に関する条約(以下、「TFEU」という。)第102条のリベートに対する適用にあたり経済学的アプローチを受容したのである。

 なお、本稿での詳述は割愛するが、本判決は、手続面でも興味深い判断を下している。欧州司法裁判所は、欧州委員会が理事会規則No 1/2003第19条に基づいて調査対象に関する情報収集を目的としてなす面談については、全て、その選択した形式でそれを記録しなければならないと判断する一方で、インテル事件では、面談記録の欠如及びそれにより生じたと主張される無罪証明文書の非開示は、欧州委員会の行政手続の有効性を損わないと結論付けたのである。

 以下、本稿の第一部では、EU競争法の域外適用の問題に関する本判決の判断について考察したい。

続きはこちらから

 

(ウィルコ・ヴァン・ウィールト)

McDermott Will & Emery法律事務所ブリュッセルオフィスのパートナー。ブリュッセル弁護士会会員。元オランダ競争当局のシニアカウンセル。Chambers Global 2017においては、Competition/European LawのForeign Expert of Japan部門において選出された。 EU競争法の他、通商法、贈収賄防止法及びデータ保護法等の案件に従事し、コンプライアンス全般に渡りアドバイスする。しばし早稲田大学及び日本大学にて教鞭をとる。

 

(むとう・まい)

McDermott Will & Emery法律事務所ブリュッセルオフィスのシニアアソシエート。2003年東京大学文学部卒業。民間企業での勤務後、2005年旧司法試験合格。海外留学を経て、2008年弁護士登録。日本の法律事務所での勤務後、2010年にCollege of EuropeにてLL.Mを取得。同年、McDermott Will & Emery法律事務所に入所し、以後EU競争法及びEUデータ保護法等の案件に従事。ブリュッセル弁護士会会員(B List)。

 

McDermott Will & Emery法律事務所 https://www.mwe.com/en/

McDermott Will & Emery法律事務所は、米国シカゴ発祥の総合法律事務所である。米国に10、欧州に8、アジアに2のオフィスを構え、全世界に1000名を越す弁護士を擁する(同事務所の拠点一覧 https://www.mwe.com/en/locations)。その幅広いネットワークを活かし、クロスボーダー案件を得意とする。また、税務、プライベートエクイティ、企業結合、ヘルスケア、訴訟及びその他の商取引に関連した主要分野において高い評価を得ている。

 



メールで情報をお届けします
(毎週火曜日・金曜日)

サイト内検索