◆SH1436◆弁護士の就職と転職Q&A Q19「外資系にはリストラされても挑む価値があるのか?」 西田 章(2017/10/16)

弁護士の就職と転職Q&A

Q19「外資系にはリストラされても挑む価値があるのか?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 サブプライムローン問題とそれに続くリーマンショックがもたらした金融危機が日本のリーガルマーケットを縮小させてから、まもなく10年が経とうとしています。日本の弁護士業界において、「転職市場」が成立したのは、この金融危機に先立つ「不動産バブル」時期でした。当時、「外資系投資銀行」や「外資系法律事務所」におけるキャリアは、経済的にも見返りの大きい「花形」職業でした。しかし、金融危機後に行われた大規模な人員リストラは、「外資系はリスクが高い」という印象を強く残す結果となりました。そのリスクを踏まえた上で、今、なお、外資系に挑む魅力がどこにあるのかを整理してみたいと思います。

 

1 問題の所在

 投資銀行のビジネスモデルは、人員リストラを内包したものであると言われます。つまり、景気がよい時期には、人員を増員して利益の最大化を目指して、その波が引けば、人員を削減して、スリムな人員構成で次の波を探ることになります。景気の減退期にはリストラが予定されており、そこにサプライズはありません(コアな人材は維持される、という期待があるために、自分自身がリストラ対象とされることにはサプライズがあるかもしれませんが)。

 また、法律事務所についても、国内系事務所であれば「撤退」はありえません。「弁護士業務=生きがい」という前提の下では、安い家賃のオフィスに引っ越したり、賃金カットをしてでも、「事務所を維持して業務を継続すること」が至上命題となります。これに対して、欧米事務所の「支店」である東京オフィスは、「ビジネス」として弁護士業務が営まれています。経営は数字で管理されているため、業績が低迷すれば、それに応じて人員を削減すること(パートナーの削減やオフィスの閉鎖までを含めて)が合理的な経営判断となります(賃金カットは、事務所で働くことの評判を下げて、優秀な人材の確保に支障が生じると考えられているため、ワークシェア的発想にはつながりません)。

 労働の対価たる給与の設計について言えば、日系企業では、ジョブ・セキュリティは手厚いですが、「弁護士有資格者も通常の社員の給与体系と同じ」という慣行が確立しつつあります。また、国内系法律事務所では、定期昇給でアソシエイトの年棒を高額化させるよりも、一定年次以降には「歩合給」的な給与体系が広まりつつあります。そのため、(自営業者としての商業的成功ではなく)「高額の給与所得」を求める弁護士にとっては、外資系は今でも魅力的な選択肢です。外資系への挑戦はキャリア形成上も合理性があるのでしょうか。

 

2 対応指針

 キャリアのリスクは「リストラされること」ではありません。「有為な経験を積むことなく、年次を重ねてしまうこと」にあります。有為な経験さえ積めていれば、リストラされても、人材市場で次の職場を見付けることは難しくありません。業務を通じて、外国クライアントや外国人弁護士からの信頼を獲得できていれば、独立または半独立的な事務所選択の道も開かれます。外資系に行くことのキャリア形成上の魅力は、「欧米のトップロイヤーと連携して英語で仕事をする経験を得ること」、「外国企業や外国人弁護士との人脈を作ること」と「自己の能力と経験を正当に評価した給与を得ること」にあると言えます。

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(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 

 




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