◆SH1407◆弁護士の就職と転職Q&A Q17「訴訟をやらない(できない)というキャリアもありか?」 西田 章(2017/09/25)

弁護士の就職と転職Q&A

Q17「訴訟をやらない(できない)というキャリアもありか?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 企業法務系の法律事務所においては、「裁判所に行かない」というパートナーはまったく珍しくありません。また、社内弁護士の多くは、自社が当事者となる訴訟においても、訴訟代理人を自ら引き受けることはなく、外部の法律事務所に任せるのが通例となっています。

 しかし、今でも、多くの修習生は「訴訟がまったくできない弁護士になるのには不安がある」と考えています。そこで、今回は、「訴訟をやらない(できない)ままにシニアになる」という選択に不都合がないかどうかを考えてみたいと思います。

 

1 問題の所在

 企業法務系弁護士の世界では、事務所の大規模化と共に、「専門化」も進んで来ました。かつては、「弁護士たるもの、まずは、一通りの業務を自分で対応できるようになってから、その幅広い基礎の上に、各自の専門性を磨くべきである」という、いわゆる、逆「T」字型のキャリア観が支配的でした。しかし、リーマンショック以降の「クライアントからのリーガルフィーに対する厳しい目」は、「アソシエイトの効率的利用」を促して、「早期の専門化」が求められるようになりました。その結果として、「訴訟技能」も、「弁護士ならば誰もが身に付けておくべき基礎的技能」ではなく、「訴訟を専門とする弁護士の特殊技能」として位置付けられるようになってきました。

 そして、法律事務所の収益構造の観点からすれば、巨大ファームにおいては(米国のようにディスカバリー制度がない日本の訴訟制度の下では)国内訴訟業務は、収益性が高いとは認識されておらず、訴訟部門は、むしろ、国際仲裁や海外訴訟のリエゾン業務の拡大に力を入れているようにも思われます。

 実際、大規模な事務所のアソシエイトでいる限りは、自らに経験がなくとも、所内の訴訟弁護士の知見を借りることができるので不便はありません。さらに言えば、事務所のブランドが立派なほどに、非専門家が訴訟代理人となって拙い対応をして裁判所や相手方代理人の評判を下げることもリスクになってしまうため、訴訟を専門としない弁護士は法廷から遠ざけられる傾向もあります。このように「訴訟を捨てる」というキャリア選択を後悔する事態は起こらないのでしょうか。

 

2 対応指針

 訴訟との関わりは、「自ら訴訟代理人を務める」という「本業」型と、「訴訟になった場合の見立てについての意見を述べる」という「付随業務」型があります。「本業」で一人前の訴訟弁護士になるためには、証人尋問(特に反対尋問)の場数を踏む必要がありますが、企業法務系弁護士の大半は、そこまでしていませんし、そこに不都合も感じていません。

 他方、「付随業務」として「訴訟の見立て」について気の利いたコメントができないとクライアントの信頼を維持できないリスクは広く認識されています。そのため、自ら法廷に立つことはなくとも、「訴訟の見立て」を問われたら、堂々としたコメントをできるようになるための情報収集の努力は続けるべきです。

続きはこちらから

バックナンバーはこちらから

 

(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)

 

 




メールで情報をお届けします
(毎週火曜日・金曜日)

サイト内検索

TMI総合法律事務所
森・濱田松本法律事務所
長島・大野・常松法律事務所
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業2021年10月8日セミナー
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

slider_image1
slider_image2