◆SH1372◆日本企業のための国際仲裁対策(第51回) 関戸 麦(2017/08/31)

日本企業のための国際仲裁対策

森・濱田松本法律事務所

弁護士(日本及びニューヨーク州)

関 戸   麦

 

第51回 国際仲裁手続の終盤における留意点(6)-ヒアリングその2

3. ヒアリング

(3) 事実に関する証人の尋問

 a 尋問の準備

 ヒアリングの一般的な進行としては、冒頭陳述(opening statement)の後は、事実に関する証人(fact witness)の尋問が行われる。

 尋問の事前準備として、証人と会議等を行うことが考えられるところ、国際仲裁において会議等が行えるのは、基本的には、自らの側の証人に限られる。すなわち、事実に関する証人の多くは、完全に中立というよりは、当事者の一方とのつながりが強いことが多く、そのため、申立人側の証人、あるいは被申立人側の証人という形で区分できることが多い。米国の民事訴訟においては、トライアルに先立ち、相手側の証人から証言を録取するデポジション(deposition)という手続がディスカバリーの一つとして利用できるが、国際仲裁でデポジションが行われることは多くない。国際仲裁で、尋問の準備として会議等が行えるのは、自らの側の証人というのが通常である。

 但し、自らの側の証人といっても、会議等に際しては、証言内容に不当な影響が及ばないという観点から、一定の制約がある。この点に関し、弁護士が自らの側の証人と会議等を行う場合については、弁護士が証人に対して及ぼす影響の有無及び程度の観点から、3つの段階があると言われている。最初の段階が「interviewing」と言われるもので、弁護士が証人から情報を収集するというものである。次の段階が「familiarization」と言われるもので、弁護士の側から証人に対してヒアリングにおける尋問の様子について、一般的に説明するものである。これには模擬尋問が該当しうるが、該当するのは、対象となっている国際仲裁の事案に基づく模擬尋問ではなく、全く別の仮想の事実に基づく模擬尋問である。三段階目が「coaching」と呼ばれるもので、これは証人の証言内容に対する指導を行うものである。実際の事案に基づく、実際の尋問を想定した模擬尋問も、この「coaching」の一つである。英国法系では、「interviewing」及び「familiarization」までは許容されるが、「coaching」は許容されていない。

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(せきど・むぎ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士。訴訟、仲裁等の紛争解決の分野において、Chambers、Legal 500等の受賞歴多数。『日本企業のための米国民事訴訟対策』(商事法務、2010年)等、国際的な紛争解決に関する執筆、講演歴多数。
1996年東京大学法学部卒業、 1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森綜合法律事務所(現在森・濱田松本法律事務所)入所、2004年シカゴ大学ロースクール(LL.M)卒業、 ヒューストン市Fulbright & Jaworski法律事務所にて執務、2005年ニュ-ヨーク州弁護士登録、2007年東京地方裁判所民事訴訟の運営に関する懇談会委員、2009年日本弁護士連合会民事裁判手続に関する委員会委員(現在副委員長)、2012年第二東京弁護士会司法制度調査会訴訟法部会部会長等。

 




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