◆SH1254◆実学・企業法務(第59回) 齋藤憲道(2017/06/26)

実学・企業法務(第59回)

第2章 仕事の仕組みと法律業務

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

4. 販売(営業)

(3) 営業の主要機能

6) トレーサビリティの確立

 企業が取り扱っている物品(商品、材料)の流通・生産・仕入の履歴情報を正確に保存し、必要に応じて川下(後工程)を追跡又は川上(前工程)に遡及できると、食品の安全問題・耐久消費財の不具合発見等の事態が生じたときに、迅速かつ適切に、修理・回収・廃棄・原因究明・再発防止等の措置を行って、被害・損害の発生や拡大を防ぐことができる。

 ただ、一般的に消費財については、メーカーが問題商品の実際の所有者・利用者を捕捉することができず、修理・回収等の対策が十分にできていないのが実態である。

  1. (注) 実際の所有者・利用者を補足できない2つの理由
    第1に、メーカーから対象商品が出荷された後で、その流通経路をたどって、卸し・小売への販売、小売から消費者への販売、各流通段階における在庫・廃棄・滅失(違法投棄を含む)、盗難、中古品販売(輸出を含む)等の実態を、多数の関係者のデータを収集して、正確に把握するのが難しい(ほとんど、無理である)。
    そもそも、メーカーは独占禁止法の規制を受けて、資本関係が無い「卸し・小売業者等」に販売した後で、その小売業者等がどの消費者に販売したのかを知ることを避けている。最終の購入者又は使用者を知っているのは、実際に商品を彼らに販売・譲渡した者(小売業者・中古品転売者等)、現在の保有者、又は廃棄(違法投棄を含む)・窃盗等した者だが、その全ての協力を得なければ保有者の全容は明らかにならない。
    第2に、顧客データの保有者(小売業者等)の事情がある。多くの個人情報を含む顧客データは、その保有者の重要な財産(営業秘密)であり、情報セキュリティ管理(アクセス管理、暗号化、個人情報管理等)や個人情報保護(利用目的の特定、安全管理、第三者提供の制限等)の対象として厳格に管理している。その例外措置を設けて、メーカーが行う商品の修理・回収(リコールを含む)に必要な顧客情報を外部に提供する積極的なメリットを見出せない。また、法律違反した者が名乗り出て情報提供するのは期待できない。

 近年、大量生産・大量消費の時代に特定の物品の流通履歴を把握する手法として有効な、個々の商品への管理番号付与・ロット管理・管理台帳等の管理システム、及び、バーコード・ICタグ等のツールの改良が進んでいる。これらの価格と使い勝手が実用的になれば、ICT(情報通信技術)の進展と相まって、多分野で活用され、トレーサビリティの量・期間・地理的範囲が大幅に拡大することが期待されている。

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(さいとう・のりみち)

1971年東京大学法学部卒業。同年松下電器産業㈱に入社し、営業、経理、経営企画、法務の業務を担当。松下電子部品㈱経営企画室長、松下電器産業㈱法務本部法務部長、JVC・ケンウッド・ホールディングス㈱監査役等を経て、2009年パナソニック㈱を退職。損害保険ジャパン日本興亜㈱ 業務品質・コンプライアンス委員会委員長を歴任。

また、内閣府消費者委員会委員(2015年秋退任)、消費者安全調査委員会臨時委員(現)、製品事故判定第三者委員会合同会議議長(現。消費者庁と経済産業省合同)、国民生活センター紛争解決委員会委員(現)、経済産業省産業構造審議会臨時委員、神戸市公正職務審査会委員(現)

 

 




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