◆SH1197◆顧客本位の業務運営に関する原則の概要(第4回) 有吉尚哉(2017/05/31)
顧客本位の業務運営に関する原則の概要(第4回)
西村あさひ法律事務所
弁護士 有 吉 尚 哉
5 個別の原則に関する実務対応
(3) 原則3:利益相反管理
【利益相反の適切な管理】 原則3.金融事業者は、取引における顧客との利益相反の可能性について正確に把握し、利益相反の可能性がある場合には、当該利益相反を適切に管理すべきである。金融事業者は、そのための具体的な対応方針をあらかじめ策定すべきである。 |
金融事業者が顧客と取引を行う場合には、当該顧客の利益と、当該金融事業者自身やグループ会社、他の顧客の利益とが相反する可能性がある。原則3は、このような利益相反状況の発生が避けられないことを前提に、金融事業者に利益相反の正確な把握と適切な管理を求めるものである。なお、対象となる取引が売買である場合には、売り手と買い手の間に常に利益相反が存在することになるが、原則3で対象としている利益相反は売り手と買い手以外の第三者の利益が関わる場合と捉えられている。
原則3の注では、利益相反の影響を考慮すべき具体的な場面として、次の場面を例示しており、このような場面では特に利益相反の管理に注意が必要となる。
- • 販売会社が、金融商品の顧客への販売・推奨等に伴って、当該商品の提供会社から、委託手数料等の支払を受ける場合
- • 販売会社が、同一グループに属する別の会社から提供を受けた商品を販売・推奨等する場合
- • 同一主体又はグループ内に法人営業部門と運用部門を有しており、当該運用部門が、資産の運用先に法人営業部門が取引関係等を有する企業を選ぶ場合
なお、上記の注ではグループの概念が用いられているが、具体的にどのような関係を有する範囲がグループとなるかは示されておらず、「顧客本位の業務運営の観点から自ら必要と考える範囲で同一グループ及び同一主体を定義し、対応することが本原則の趣旨に適う」とされている。
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(ありよし・なおや)
西村あさひ法律事務所パートナー弁護士。2001年東京大学法学部卒業。2002年西村総合法律事務所入所。2010年~2011年金融庁総務企画局企業開示課専門官。現在、金融法委員会委員、日本証券業協会「JSDAキャピタルマーケットフォーラム」専門委員、京都大学法科大学院非常勤講師。主な業務分野は、資産流動化取引その他の金融取引、信託取引、金融関連規制対応等。
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