◆SH1195◆大阪高判、大会社の会計限定監査役に損害賠償を認めた原審の判断は不相当とされた事例 青木晋治(2017/05/30)

大阪高判、大会社の会計限定監査役に損害賠償を認めた原審の判断は
不相当とされた事例

岩田合同法律事務所

弁護士 青 木 晋 治

 

1. 事案の概要等

 大阪高等裁判所は、平成29年4月20日、黒毛和種牛の繁殖及び飼養を業とする株式会社安愚楽牧場(旧商号・有限会社安愚楽牧場、以下「安愚楽牧場」という。)と取引(和牛預託取引)した投資者らが、安愚楽牧場の元役員らに対し投下資本を回収できずに損害を被ったとして、安愚楽牧場の勧誘が違法であり、元役員らは安愚楽牧場の違法な業務遂行の是正に向けた行動をとるべき義務を負っていたのに、その義務を果たさず、違法な業務遂行を援助助長したとし、民法719条(共同不法行為)又は会社法429条1項に基づき元役員らに対し損害賠償を求めていた事案の控訴審である。

 原判決(大阪地判平成28年5月30日)は、業務監査をしていれば、契約者の員数に見合う数量の和牛が不足する事態に至っていた事実等を認識しまたは認識し得たと認められる元監査役1名、及び業務遂行の過程で当該事実を認識し、または認識し得たと認められる元取締役1名に対する関係でそれぞれ損害賠償請求を認めていたが、控訴審判決(以下「本判決」という。)は、投資者らの請求をいずれも棄却した(元監査役らの逆転勝訴)。

 

2. 取締役らの責任

 安愚楽牧場が当社らとの間で行っていた和牛預託取引は、安愚楽牧場が投資者に売却した繁殖牛を一定期間預かり飼養した後、当該繁殖牛を売却額と同額で投資者から買い戻し、買戻しまでの期間中繁殖牛の売却代金の年5分程度の金員を投資者に支払うという取引であった。

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(あおき・しんじ)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2007年慶應義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録。『新商事判例便覧』(共著、旬刊商事法務、2014年4月25日号~)、『Q&A 家事事件と銀行実務』(共著、日本加除出版、2013年)、『民事再生手続における取立委任手形にかかる商事留置権の効力』(共著、NBL969号、2012年)、「金融ADRから学ぶ実務対応」(共著、銀行実務2012年10月号)(共著、金融財政事情研究会、2014年)等著作多数。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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