◆SH1193◆企業法務への道(16)―拙稿の背景に触れつつ― 丹羽繁夫(2017/05/30)

企業法務への道(16)

―拙稿の背景に触れつつ―

日本毛織株式会社

取締役 丹 羽 繁 夫

《「ときめきメモリアル」事件判決と半田正夫先生古稀記念論文集への寄稿》

 「ときめきメモリアル」は、コナミにより、当初はPCエンジンSuper CD-ROM向けに発売され、その後1995年10月にPlayStation版が発売されるに及び大ヒットをブレークし、「恋愛シミュレーションゲーム」のジャンルを定着させた、同社にとっての記念碑的なゲームソフトである。このゲームは、ゲームユーザーが高校3年間を過ごすゲームの主人公を操作し、卒業式に意中の女性徒から愛の告白を受けられることを目指して、3年間の勉学や出来事、イベント等を通して愛の告白を受けるのにふさわしい能力(体調、文系、理系、芸術、運動、雑学、容姿、根性及びストレスで構成される9種類のパラメータ)を備えるための努力を積み重ねるという恋愛シミュレーションゲームである。コナミが96年に提起したこの訴訟の争点は、本来低い値から始まる主人公のパラメータがゲーム開始当初より最高値から開始することができたり、卒業式間近のゲームシーンからゲームを開始することができるデータが格納されているメモリーカードを販売した被告に対して、コナミの有する同一性保持権の侵害に基づく同メモリーカードの販売差止めと損害賠償請求にあった。

 私はこの訴訟の上告審の段階から担当した。第一審判決の大阪地判平成9年11月27日はコナミの請求を棄却したが、控訴審判決の大阪高判平成11年4月27日はコナミの主張を認めたので、被告が上告していた。2000年の秋頃であったか、最高裁より口頭弁論を開く旨の連絡があり、上告審では慎重の上にも慎重を期すべく、コナミの代理人をお願いしていた松田政行弁護士のご提案により、弁護団長として著作権法の大家である半田正夫先生(当時、青山学院大学学長)をお迎えした。幸い上告審では、「本件メモリーカードの使用は、本件ゲームソフトを改変し、被上告人の有する同一性保持権を侵害する・・・。けだし、本件ゲームソフトにおけるパラメータは、それによって主人公の人物像を表現するものであり、その変化に応じてストーリーが展開されるものであるところ、本件メモリーカードの使用によって、本件ゲームソフトにおいて設定されたパラメータによって表現される主人公の人物像が改変されるとともに、その結果、本件ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開され、ストーリーの改変をもたらす」からであるとして、コナミ側の主張が認められた。この判決は著作物についての同一性保持権を初めて認めた最高裁判決ともなった。

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丹羽 繁夫 (日本毛織株式会社取締役)

(略歴)
1948年愛知県生まれ。1971年京都大学法学部卒業後、(株)日本長期信用銀行に入行。同行法務部長を経て、2000年コナミ(株)法務部長、2003年同社執行役員(法務・知的財産本部長)就任。2008年財団法人日本品質保証機構参与、2013年日本毛織(株)監査役、2017年同取締役就任。

 「コーポレート・ガバナンスをめぐる法律上・規制上のフレームワーク」『米国のコーポレート・ガバナンスの潮流』所収(商事法務、1995)、「インサイダー取引規制の基礎となる重要事実の発生と認定」金法1545号(1999)、「ゲームソフトの著作物性をめぐる判例の展開と考察」(半田正夫先生古稀記念論集『著作権法と民法の現代的課題』所収、法学書院、2003)、「プロ野球選手のパブリシティ権をめぐる諸問題-東京地判平18・8・1が積み残した課題」NBL858号(2007)、「『ロクラク』著作権侵害差止等請求事件控訴審判決の検討-東京高判平21.1.27」NBL935号(2010)、商事法務タイムライン(2014年10月6日)「ヤフー事件判決(東京地裁平成26年3月18日)の争点と課題」、ほか多数。 

 



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