◆SH1167◆日本企業のための国際仲裁対策(第37回) 関戸 麦(2017/05/18)

日本企業のための国際仲裁対策

森・濱田松本法律事務所

弁護士(日本及びニューヨーク州)

関 戸   麦

 

第37回 国際仲裁手続の中盤における留意点(12)-ディスカバリーその7

11. 米国の裁判所を通じたディスカバリー(合衆国法典28編1782条(a))

(1) 意義

 前回(第36回)においては、国際仲裁手続への協力としての、裁判所による証拠収集・証拠調べについて述べた。この裁判所による協力は、全ての国際仲裁手続を対象とするものではなく、仲裁地がその裁判所の所在する国であるものに限定されている。例えば、日本の裁判所による協力の対象となるのは、仲裁地が日本あるいは日本国内の都市等とされた国際仲裁手続に限られる。

 これに対し、米国の裁判所は、仲裁地が米国以外であっても、国際仲裁手続のために証拠収集(ディスカバリー)を行うことがある。根拠条文から、「セクション1782ディスカバリー」などと呼ばれる制度である。

 合衆国法典28編1782条(a)(28 U.S.C.§1782(a))は、米国の連邦地方裁判所が、海外の又は国際的な法廷(foreign or international tribunal)の手続のために、ディスカバリー手続を行うことができると定めている。対象となるディスカバリー手続は、法文上、証言の録取と、文書の提出が記載されているが、これは例示であり、eディスカバリーを含め、様々なディスカバリー手続が対象となり得る。したがって、この手続を通じて、国際仲裁手続に、米国の民事訴訟的な広範なディスカバリーが取り込まれる可能性がある。

 また、対象者には、国際仲裁手続の当事者と第三者のいずれもなり得るが、手続を行う連邦地方裁判所の管轄地内に居住又は所在する者である必要がある。したがって、合衆国法典28編1782条(a)に基づくディスカバリーが意味を持つのは、米国内に居住又は所在する企業又は個人から証拠を入手することが意味を持つ場面である。

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(せきど・むぎ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士。訴訟、仲裁等の紛争解決の分野において、Chambers、Legal 500等の受賞歴多数。『日本企業のための米国民事訴訟対策』(商事法務、2010年)等、国際的な紛争解決に関する執筆、講演歴多数。
1996年東京大学法学部卒業、 1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森綜合法律事務所(現在森・濱田松本法律事務所)入所、2004年シカゴ大学ロースクール(LL.M)卒業、 ヒューストン市Fulbright & Jaworski法律事務所にて執務、2005年ニュ-ヨーク州弁護士登録、2007年東京地方裁判所民事訴訟の運営に関する懇談会委員、2009年日本弁護士連合会民事裁判手続に関する委員会委員(現在副委員長)、2012年第二東京弁護士会司法制度調査会訴訟法部会部会長等。

 

 




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