◆SH1042◆日本企業のための国際仲裁対策(第27回) 関戸 麦(2017/03/02)

日本企業のための国際仲裁対策(第27回)

森・濱田松本法律事務所

弁護士(日本及びニューヨーク州)

関 戸   麦

 

第27回 国際仲裁手続の中盤における留意点(2)-書証の提出

1. 書証の重要性

 国際仲裁においても、訴訟同様、書証が重要な意味を持つ。特に、仲裁の対象となっている事象が生じた当時に、紛争となることを意識せずに作成された証拠は、「contemporaneous evidence」と呼ばれ、仲裁を有利に進めようとの作為が介在する可能性が低いことから、客観性と証明力が高いとされる。

 このような書証と比べ、証人の供述は、様々な理由に不正確となりやすいというのは、国際仲裁の実務においても共通認識である[1]。そこで、書証がより重視される傾向にあり、書証をいかに効果的に提出するかが、各当事者にとって重要な課題となる。

 

2. 仲裁法及び仲裁規則の定め

 書証の提出について、仲裁法及び仲裁規則は、特に具体的な定めを設けていない。例えば、日本の仲裁法が定めていることは、当事者の合意があれば原則としてそれに従うことと、当事者の合意がなければ、仲裁廷が証拠に関する判断を行うといった程度である(26条1項及び3項)。

 仲裁機関の規則においても、書証の提出につき詳細な定めはなく、例えばICC(国際商業会議所)の規則においては、仲裁廷が書証の検討をした後にヒアリングを実施することと、仲裁廷が当事者に対して追加証拠の提出を求められるといった程度のことが定められているだけである(25.2項、25.5項)。

 その結果、当事者の合意がなければ、書証の提出について仲裁廷を拘束するものはほとんどなく、仲裁廷が広範な裁量を有することになる。

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(せきど・むぎ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士。訴訟、仲裁等の紛争解決の分野において、Chambers、Legal 500等の受賞歴多数。『日本企業のための米国民事訴訟対策』(商事法務、2010年)等、国際的な紛争解決に関する執筆、講演歴多数。
1996年東京大学法学部卒業、 1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森綜合法律事務所(現在森・濱田松本法律事務所)入所、2004年シカゴ大学ロースクール(LL.M)卒業、 ヒューストン市Fulbright & Jaworski法律事務所にて執務、2005年ニュ-ヨーク州弁護士登録、2007年東京地方裁判所民事訴訟の運営に関する懇談会委員、2009年日本弁護士連合会民事裁判手続に関する委員会委員(現在副委員長)、2012年第二東京弁護士会司法制度調査会訴訟法部会部会長等。

 

 




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