◆SH0968◆第三者委員会の役割と機能 第2回 久保利英明(2017/01/17)

第三者委員会の役割と機能

第三者委員会とは何か――その概要と役割 (第2回)

日比谷パーク法律事務所代表

弁護士 久保利 英 明

 

Ⅰ 第三者委員会の本質とは何か

6. 費用は誰が負担するか・費用はいくらくらいか

 第三者委員会の活動のためにはもちろんお金がかかります。誰が負担するのだ、いくらぐらいかかるのかはシビアな問題です。弁護士の仕事には基本的に2種類の報酬体系があります。1つは、着手金をまずいただき、成功したら成功報酬をいただく。それをあらかじめいくらぐらいと契約した上で進めるというものです。ところが、第三者委員会に、そもそも成功という概念があるのだろうか。着手金をいくらと決められるような訴額があるのだろうか。狙いはその企業の価値の再生ですが、それを訴額とみるのは無理があります。第三者委員会が出せるのは、せいぜい提言までです。最終的な再生は会社が自力でやるしかありません。そうすると、成功報酬方式とは相容れませんよね。

 では、もう1つのタイムチャージという方式ではどうでしょうか。あまり効果が上がらないようなスタッフを大量に投入して多額の金額を請求するというのでは、オールステークホルダーのために申し訳ない。費用は、企業のトップがポケットマネーから払うものではなくて、会社の利益、収益の中から払うものです。その根源は従業員の方が働いて会社にもたらしたもの、あるいは、商品を購入した消費者が支払ったものです。こうした方々によるお金が原資になるわけですから、無駄遣いはとんでもない。

 そこで、基本はタイムチャージをとりますが、一般的に請求している金額よりもやや低目に抑えます。調査を担当する弁護士1人のタイムチャージは3万円から5万円ぐらいです。相当の力量を持っている人でも5万円ぐらいで抑えることを考えます。どのくらいの時間を使うかはケースによって異なりますが、比較的簡易なケースでも合計で数百万円ぐらいはかかるでしょう。たとえば、スタッフを3人投入して、その人たちが1人100時間使ったとすれば、これだけで300時間。1人のタイムチャージが3万円であれば900万円はかかります。相当節約をしても数百万円単位でかかるというのが正直なところです。

 ただし、重大な不祥事が発生したらコンサルタントの指導の下で社長が会見しても企業価値や信用の毀損は止まりません。もし第三者委員会でそれが止まるのであれば、会社として支払う価値はあるとも言えます。仮に深刻で調査範囲も広い不祥事ですと、調査に何ヵ月も要します。3ヵ月かかるケースで、フルタイムのスタッフを6人投入したとすると、委員のチャージやフォレンジックの費用も含めて1億円近いお金がかかることもあります。しかし、その不祥事で企業やステークホルダーが受けたダメージはそんな金額にとどまりません。特に投資家の被った損害はものすごい金額になります。そのような状況から回復し、株価を持ち上げるための第三者委員会の報告書(提言)ですから、ある程度の支出は企業としても腹をくくっていただかなければならない。しかし、もしそれが5億円、10億円となると、それは第三者委員会側がとり過ぎだろうと思います。

 

7. 社内スタッフの活用と留意事項

 その会社の従業員の方々に社内スタッフとして関わっていただくことも必要です。そこで大事なのは、その方々の身分をきちんと守ってあげることです。その方々は、第三者委員会の指揮の下で調査に関わり、一生懸命に働きます。しかしそれは、人事部が日ごろ評価しようとする業務とはまったく異なる世界です。そこで一生懸命不祥事の調査や分析をやったからと報復人事を受けて左遷されるのでは誰もやりたくなくなります。

続きはこちらから

 

(くぼり・ひであき)

1944年生まれ。1967年司法試験合格。68年東京大学法学部卒業。71年弁護士登録。
2001年度第二東京弁護士会会長、日弁連副会長。
2011年~日本取引所グループ社外取締役、日本取引所自主規制法人外部理事。
不二家、NHK、ゼンショーホールディングス等多数の第三者委員会の委員、同格付け委員会委員長を務める。桐蔭法科大学院教授。
著書『日本改造計画』(商事法務)『久保利英明ロースクール講義』(日経BP)等全73冊。

 

 




メールで情報をお届けします
(毎週火曜日・金曜日)

サイト内検索

森・濱田松本法律事務所
長島・大野・常松法律事務所

slider_image1
slider_image2

slider_image1
slider_image2
TMI総合法律事務所