◆SH0963◆最大決(寺田逸郎裁判長)、共同相続された預金債権、貯金債権は遺産分割の対象となるとされた事例 柏木健佑(2016/1/13)

最大決(寺田逸郎裁判長)、共同相続された預金債権、貯金債権は
遺産分割の対象となるとされた事例

岩田合同法律事務所

弁護士 柏 木 健 佑

 

 最高裁は、2016年12月19日、共同相続人間の遺産分割申立事件につき、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる旨を判示して、これに反する判断を行っていた大阪高裁の決定を破棄し、差し戻しを命ずる決定を下した(補足意見、意見を含む理由の概要は以下表のとおり)。

 相続財産に含まれる金銭債権の帰属と遺産分割の関係については、最判昭和29年4月8日民集8巻4号819頁が相続財産中の可分債権は当然に分割される旨を判示して以降、判例は、一貫して、相続財産に含まれる金銭債権は当然に分割されて相続人に帰属し、相続人全員の合意がない限り遺産分割の対象とはならないとの立場をとってきた。しかしながら、かかる判例の立場に対しては、可分債権について形式的な分割承継を行う結果相続人間の実質的公平を図ることができなくなる可能性や、可分債権が遺産分割の調整手段として機能する点を指摘する見解もあり、法務省法制審議会の民法(相続関係)部会において、可分債権を遺産分割の対象に含める方向で相続法改正の検討が進められてきた。最高裁も、定額郵便貯金債権の共同相続に関しては、法令により分割制限を加えられていることを理由として当然に分割されるものではないとの理解を前提として判断を行っており(最判平成22年10月8日民集64巻7号1719頁)、具体的な事案について当然分割を否定する判断も行っている。その後も、最高裁において、実質として預金債権と同様に扱われると言われるMRFその他の投資信託受益権、個人向け国債及び株式について当然分割を否定する判断がなされるなど(最判平成26年2月25日民集68巻3号173頁)、近時の判例は相続財産の当然分割について慎重な姿勢を示してきたことから、本決定はそのような流れの中に位置づけることも可能であろう。

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  最大決(寺田逸郎裁判長)、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるとされた事例(2016年12月19日)

   http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86354

 

(かしわぎ・けんすけ)

岩田合同法律事務所パートナー。2005年東京大学法学部卒業。2007年弁護士登録。ファイナンス関連業務を中心に多様な企業法務を取り扱う。主な著作・論文として、『CFOのための想定問答集』(共著 旬刊経理情報1344号 2013年)、『アブラハム・プライベートバンク事件などを踏まえた投資助言業務の分析』(共著 旬刊商事法務2019号 2013年)。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

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1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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