◆SH0961◆実学・企業法務(第15回) 齋藤憲道(2017/01/12)

実学・企業法務(第15回)

第1章 企業の一生

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

(2) 金(カネ)

1) 資金調達

③  借入れ
 借入れは、銀行等から、当座貸越・手形貸付・証書貸付(借手が借用証書を差入れて借金する)等の方法で行う。
 当座貸越は、銀行が、当座預金の取引先との間で締結した当座貸越契約[1]に基づいて、その取引先が振り出した手形・小切手の支払いに当座預金残高を超えて契約限度額の範囲内で応じる。
 手形貸付は、企業が銀行を受取人とする約束手形を振り出し、銀行がこれを割り引いて企業に資金を提供する方法で、銀行としては金利を確定し、企業が支払不能に陥っても手続きが簡便な手形訴訟で取り立てることができる利点がある。手形が1度でも不渡りになると手形交換所の参加銀行に不渡報告され、以後の銀行折衝[2]だけでなく、事業の仕入先等との取引継続も厳しくなる[3]ので、企業は不渡りの回避に向けて最善を尽くす。
 通常の証書貸付(借手が借用証書を差入れて貸付)では、(a)人的担保(保証・連帯保証)又は(b)物的担保が設定される。(b)物的担保には、典型担保物件(当事者間の契約で成立する[4]質権・抵当権・根抵当権と、法律により当然に発生する[5]留置権・先取特権がある)と、非典型担保物件(仮登記担保・譲渡担保・所有権留保)があり、この中から適切な方法が選ばれる。
 これらの担保以外に、実質的に担保的機能を果たす方法として、相殺・代理受領・振込指定が用いられる。特に、相殺は、回収を確実にする方法として重要な役割を果たしている。
 信用力や担保力に乏しい中小企業の場合は、信用保証協会[6]に信用保証料を支払って債務保証して貰い、銀行から融資を受けることができる。
 企業の決算では、借入金は、1年内返済の短期借入と1年超の長期借入に区分して計上される[7]

 

〔銀行等の貸し手のスタンス〕

(ⅰ) 与信審査、与信管理
 銀行は、(a)自己責任の原則に基づき、貸付の収益性・安全性・社会性を考慮しつつ自社の規模・特性を反映して方針・内部規程等を作成するとともに、(b)取引先ごとに与信審査を行って与信限度額・担保・貸付期間等の貸付条件等を設定し、基本的に、(a)及び(b)の枠内で貸付を行う。

〔信用リスク・貸倒引当〕
 取引先の信用リスク評価は、融資先の経営者・役員/従業者・企業活力・社歴・出資者・決算状況(規模、利益、資金繰り・資金使途等)・担保力(物、人)・市場競争力・取引先・業界動向等の定量的及び定性的な分析に基づいて、与信部門・与信業務の担当者から機能的に独立した信用リスク管理部署で行う[8]
 発生可能性が高い将来損失額を合理的に見積もった金額を貸倒引当金として、銀行の決算に計上する。銀行の融資先は、信用リスクの高低によって次のランクに分けられ、それぞれの融資額はランクに応じて厳しく評価される。

  1. 債務者区分[9]
    1) 正常先:「正常債権」と評価
    2) 要注意先:「要管理債権」と評価
      3ヵ月以上返済が延滞した債権、貸出条件を緩和した債権
    3) 破綻懸念先:「危険債権」と評価
      契約に従った債権の元本の回収、利息の受取ができない可能性が高い
    4) 実質破綻先及び破綻先:「破産更生債権及びこれらに準ずる債権」と評価

 借り手にとっては、自社が銀行の中でどのように評価され、どの債務者区分に格付けされているのかが融資額・金利・担保等の条件に直結する関心事になる。繰越欠損・元利払いの延滞・金利減免等の管理項目に該当すると、銀行では「2) 要注意先」以下のランクに評価して貸付金の回収に向かい、追加融資には消極的になる。もし、借り手が「銀行で自社が高リスク取引先に格付けされている」という情報を得た場合は、早急に抜本的な経営改善に取り組む必要がある。

続きはこちらから

バックナンバーはこちらから

 

(さいとう・のりみち)

1971年東京大学法学部卒業。同年松下電器産業㈱に入社し、営業、経理、経営企画、法務の業務を担当。松下電子部品㈱経営企画室長、松下電器産業㈱法務本部法務部長、JVC・ケンウッド・ホールディングス㈱監査役等を経て、2009年パナソニック㈱を退職。損害保険ジャパン日本興亜㈱ 業務品質・コンプライアンス委員会委員長を歴任。

また、内閣府消費者委員会委員(2015年秋退任)、消費者安全調査委員会臨時委員(現)、製品事故判定第三者委員会合同会議議長(現。消費者庁と経済産業省合同)、国民生活センター紛争解決委員会委員(現)、経済産業省産業構造審議会臨時委員、神戸市公正職務審査会委員(現)

 




メールで情報をお届けします
(毎週火曜日・金曜日)

サイト内検索