◆SH0960◆日本企業のための国際仲裁対策(第20回) 関戸 麦(2017/01/12)

日本企業のための国際仲裁対策(第20回)

森・濱田松本法律事務所

弁護士(日本及びニューヨーク州)

関 戸   麦

第20回 国際仲裁手続の序盤における留意点(14)-仲裁人の選任等その5

6. 仲裁人を選ぶ上での考慮要素

(1) 仲裁人候補者について検討をする必要性

 前回(第19回)、仲裁人となるための資格・要件について解説した。今回は、この資格・要件を満たす者の中から、誰を仲裁人とするべきかという点につき、考慮するべき要素について解説する。

 誰が仲裁人になるかは、第16回で述べたとおり、極めて重要な意味を持つ。

 また、仲裁人の選任手続に、各当事者が関与できるというのが、国際仲裁における基本的なルールである。すなわち、第17回で述べたとおり、仲裁人が3名の場合には各当事者が1名ずつ仲裁人を指名することができる。仲裁人が1名の場合には、誰を仲裁人とするかについて当事者間で協議がまとまれば、基本的にその者が仲裁人となり、協議がまとまらない場合も、仲裁機関が仲裁人を選任する際に、各当事者の意見を考慮する。このようにいずれの場合にも、誰を仲裁人とするべきかについて、各当事者が考えを示すことが予定されている。

 したがって、仲裁手続の当事者としては、誰が仲裁人となるべきかにつき検討をすることが、重要な作業となる。

 仲裁人を選ぶ上で考慮するべき要素であるが、一般的なものとして、以下の項目がある。

(2) 弁護士、学者、非法律家のいずれを選択するか

 前回述べたとおり、仲裁人となるために弁護士資格は必須のものではないものの、大半の場面において、仲裁人として選任されるのは弁護士である。仲裁手続においては、様々な法的な判断が求められるため、法律の専門家である弁護士を仲裁人とすることは落ち着きが良い。

 法律の専門家としては、法学者もおり、これを仲裁人とすることもある。特に法律論が主要な争点である案件であれば、法理論研究の専門家である法学者を仲裁人とすることに合理性がある。但し、法学者を仲裁人とすることについては、一般論として、法理論に過度に着目して、当該案件の事実関係を踏まえずに、バランスの悪い判断をするリスクがあると言われている。もっとも、仲裁人や代理人弁護士としての経験を十分に有する法学者等、この懸念が当てはまらない法学者も考えられ、そのような法学者は有力な仲裁人候補者である。

 また、非法律家であるエンジニア等を仲裁人とすることもある。非法律家は、技術的な事項や、あるいは業界特有の慣行等について深い理解があり、これらに関する適切かつ効率的な判断をすることが期待できる。

 但し、上記のとおり仲裁手続には様々な法的判断が求められるため、仲裁人が全て非法律家という状況は、通常は避けられている。したがって、非法律家が仲裁人となるのは、通常は、仲裁人が3名の場合で、そのうち少なくとも一人は法律の専門家とし、残り一名又は二名が非法律家という場合である。

 また、専門的知見を確保する方法としては、第18回において述べたとおり、専門家証人を各当事者が確保し、その尋問を行うという方法もある。したがって、技術的な事項等が問題となる事案においても、技術的な事項等の専門家を仲裁人とすることは、必須ではない。そのため、上記のとおり、大半の場面において弁護士が仲裁人となっている。

もっとも、上記のとおり、弁護士以外の選択肢もあるため、事案毎に、仲裁人を弁護士とするべきか、弁護士以外とするべきかを検討することになる。

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(せきど・むぎ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士。訴訟、仲裁等の紛争解決の分野において、Chambers、Legal 500等の受賞歴多数。『日本企業のための米国民事訴訟対策』(商事法務、2010年)等、国際的な紛争解決に関する執筆、講演歴多数。
1996年東京大学法学部卒業、 1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森綜合法律事務所(現在森・濱田松本法律事務所)入所、2004年シカゴ大学ロースクール(LL.M)卒業、 ヒューストン市Fulbright & Jaworski法律事務所にて執務、2005年ニュ-ヨーク州弁護士登録、2007年東京地方裁判所民事訴訟の運営に関する懇談会委員、2009年日本弁護士連合会民事裁判手続に関する委員会委員(現在副委員長)、2012年第二東京弁護士会司法制度調査会訴訟法部会部会長等。

 

 




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