◆SH0912◆監査役協会、「『コーポレートガバナンス・コード(第4章)』の開示傾向と監査役としての視点」を公表 泉 篤志(2016/12/07)
監査役協会、「『コーポレートガバナンス・コード(第4章)』の開示傾向と
監査役としての視点―適用初年度における開示分析―」を公表
岩田合同法律事務所
弁護士 泉 篤 志
平成28年11月24日、日本監査役協会が、「『コーポレートガバナンス・コード(第4章)』の開示傾向と監査役としての視点―適用初年度における開示分析―」(以下、「本報告書」という。)をHPに掲載した。本報告書は、平成27年6月に適用が開始された「コーポレートガバナンス・コード」(以下、「GC」という。)のうち、企業統治の根幹である「第4章(基本原則4)取締役会等の責務」に焦点を絞って、約2,000社の上場会社のコーポレート・ガバナンスに関する報告書における開示内容の傾向(同年12月末日現在)や、監査役としての対応が考えられる視点について検討を行ったものである。以下、かかる検討のうち主なものについて紹介する。
1 取締役会の役割・責務(原則4-1、4-2、4-3)
GCでは、取締役会の役割・責務として、具体的な経営戦略や経営計画等の戦略的な方向付けを踏まえて、経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境の下、迅速果断な意思決定が行われることが求められている。また、経営の委任を受けた経営陣・取締役に対する取締役会による実効性の高い監督を重視し(モニタリングモデル)、内部統制やリスク管理体制の整備等を行うことが求められている。
これらの点に関する開示内容として、多くの上場会社においては、「実施しない理由」(エクスプレイン)を記載するよりも、自社の現況や今後の対応等を述べる例(コンプライ)が多く見られる。一方で、例えばリスクテイクを支える環境整備の一つとして、業績連動報酬や自社株報酬の導入が求められているところ(補充原則4-2①)、この点については、「実施しない理由」として、天候・景気等外部要因により業績が左右されることを挙げている例が多くみられる。
これらに対する監査役としての視点については、いわゆる経営会議などの審議結果を追認するだけではなく、経営理念や戦略的な方向付けについて建設的な議論がなされているか確認すること、経営陣の報酬体系と中長期的な会社の業績や潜在的なリスクとの関連性について、取締役会で審議されている内容を確認すること等が重要であると指摘されている。
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(いずみ・あつし)
岩田合同法律事務所パートナー。2004年東京大学法学部卒業。2005年弁護士登録。2013年University of Southern California卒業 (LL.M.)。2014年ニューヨーク州弁護士登録。「特集 改正会社法と実務対応Q&A」(共著 金融法務事情2014年9月25日号)、「IPOと戦略的法務-会計士の視点もふまえて」(共著 商事法務 2015年)等著作多数。
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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