◆SH0888◆メキシコの知的財産権制度の基礎 村田知信(2016/11/21)

メキシコの知的財産権制度の基礎

西村あさひ法律事務所

弁護士 村 田 知 信

 

1 はじめに

 メキシコは、知的財産に関する様々な条約・協定に積極的に加盟しており、国内法もそれらを反映して様々な知的財産の保護を規定している。

 具体的には、特許・実用新案、意匠、商標、集積回路配置、営業秘密、著作物等の我が国で保護される知的財産については、メキシコでも概ね保護を規定する法律が存在する。また、その内容についても、我が国の知財実務担当者の目から見て比較的理解し易いものである。

 メキシコの知的財産権制度の特徴として、法制度が整備されている反面、その利用・執行等における実効性が課題だとされることが多い。例えば、商標については、メキシコ居住者による出願が一定数を占めるものの、特許については、出願の大半がメキシコ非居住者(外国会社等)によるものであり、メキシコ居住者によって十分に利用されていない等と指摘されている。

 以下、メキシコにおける主な知的財産権制度について、概要を説明する。

 

2 産業財産権

(1) 特許及び実用新案

 特許権の存続期間は、出願日から20年間である。

 保護対象は発明であり、発見や科学上の理論そのもの、商業的活動計画、コンピュータープログラム自体、治療・診断方法等は特許の対象とはならない。

 登録要件としては、日本と同じく、新規性、進歩性、産業上の利用可能性が求められている。複数の者が同一の発明について特許出願をした場合、早く出願した者が優先される。

 出願プロセスとしては、出願後、方式審査を経て、出願日から1年6か月の経過により出願が公開される。もっとも、日本と異なり審査請求制度が採用されていないため、出願は自動的に登録要件を満たしているか審査され、特許付与通知又は拒絶理由通知が行われる。拒絶理由通知が行われた場合、出願人は一定期間内に意見書や補正書を提出することができるが、それらによって拒絶理由が解消されない場合、最終的に拒絶査定がなされる。拒絶査定には不服申立てが可能である。

 また、実用新案権の存続期間は、出願日から10年である。

 保護対象は、物品に関する形態、形状、構造、配列等で有用なもの、製品、装置、器具等に限られており、方法は保護の対象ではない。日本と同じく、特許と比べて対象が限定されている。

 登録要件としては、特許と同様に新規性、産業上の利用可能性が求められており、出願プロセスについても、出願公開が行われる点や審査請求制度が存在しない点等で特許権とほぼ同様である。すなわち、日本と異なり、実用新案も出願段階で実体審査が行われる。

 なお、第三者が特許権や実用新案権の有効性等を争う手段としては、日本と同じく無効審判制度が存在するが、異議申立制度は採用されていない。

(2) 意匠

 意匠権の存続期間は、出願日から15年であり更新はできない。

 保護対象となる意匠は、概要、物品の模様・色彩又はそれらの結合により工業製品に特徴的な外観を与える創作だとされる。登録要件として、新規性、独自性(公知の意匠又は公知の意匠特性の組み合わせと独立して創作されそれらと重要な点において異なっていること)及び産業上の利用可能性が求められている。

 意匠の出願プロセス及び有効性を争う手段については、出願公開制度が採用されていない以外は、概ね特許及び実用新案と同様である。すなわち、審査請求制度が採用されていないため全件実体審査が行われる。また、無効審判制度が存在するが、異議申立制度は採用されていない。

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(むらた・とものぶ)

西村あさひ法律事務所アソシエイト弁護士。2010年弁護士登録。2011年西村あさひ法律事務所入所。IT関連を中心とした知的財産案件を主に担当している。

西村あさひ法律事務所 https://www.jurists.co.jp/

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