◆SH4309◆最二小判(尾島明裁判長)、プロバイダ責任制限法の改正省令施行前の権利侵害行為であっても、改正省令に基づき発信者の電話番号の開示を請求できるとした判断 藤原未彩(2023/02/08)

最二小判(尾島明裁判長)、プロバイダ責任制限法の改正省令施行前の権利侵害行為であっても、改正省令に基づき発信者の電話番号の開示を請求できるとした判断

岩田合同法律事務所

弁護士 藤 原 未 彩

 

1 はじめに

 令和2年8月31日に施行された令和2年総務省令第82号(以下「令和2年改正省令」という。)によって、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項(令和3年法律第27号施行前。現在の5条1項に相当)に基づき開示を請求できる発信者情報に、発信者の「電話番号」が追加された。しかし、令和2年改正省令は、経過措置等の規定を置いていなかったため、令和2年改正省令の施行前に権利の侵害が行われた場合であっても、当該権利侵害を行った発信者の「電話番号」の開示を求めることができるか否かについて、下級審裁判例では結論が分かれていた。

 この点について、最高裁は、令和2年改正省令の施行前に権利の侵害がされたものであっても、発信者の電話番号の開示を請求できると判断した。以下、改正の経緯及び最高裁の判断を紹介する。

 

2 改正の経緯

 プロバイダ責任制限法に定める発信者情報開示の在り方に関しては、総務省に設置された「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(以下「本研究会」という。)において検討が行われ、本研究会が令和2年8月31日に発表した中間とりまとめにおいては、プロバイダ責任制限法の開示対象に「電話番号」を追加するために省令の改正を行うことが適当である旨の指摘がなされた。これを受けて開示対象となる発信情報に発信者の電話番号を追加する旨の改正を行ったのが令和2年改正省令である。

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(ふじはら・みさ)

岩田合同法律事務所所属。2015年九州大学法学部退学。2017年九州大学法科大学院終了。2019年1月判事補任官。東京地方裁判所勤務を経て、2022年4月「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」に基づき弁護士登録。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

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1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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