◆SH4212◆ISS、2023年版議決権行使助言方針(ポリシー)改定案を公表、コメント募集を開始 松橋 翔(2022/11/25)

ISS、2023年版議決権行使助言方針(ポリシー)改定案を公表、
コメント募集を開始

岩田合同法律事務所

弁護士 松 橋   翔

 

 Institutional Shareholder Services Inc.(以下「ISS」という。)は、2022年11月7日、2023年版の議決権行使助言方針(ポリシー)の改定案(以下「本改定案①」という。)を公表し、同月4日から同月16日までの間、本改定案①に関するコメントを募集した。

 また、2022年版の議決権行使助言方針(ポリシー)改定で決定済みの改定(以下「本改定案②」という。)が2023年2月より適用されることになる。

 2023年版の日本向けの議決権行使助言方針(ポリシー)については、正式決定後、ISSウェブサイトで公開される予定であるが、以下では、本改定案①・②の概要等を説明する。

 

1 温室効果ガス排出量の多い企業における取締役会の気候アカウンタビリティ

 本改定案①では、日本を含めた全市場について、Climate Action 100+により選定された企業を対象に、当該企業が気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)などの枠組みに従い気候変動リスク情報が適切に開示されているとは見なせない場合、少なくともスコープ1および2の大部分(95%以上)における、温室効果ガス排出量削減の中期目標または2050年までのネットゼロ目標を持っていない場合、取締役の選任に反対を推奨することを提案するものとされている。

 元々ISSは、2022年に米国、欧州、英国、アイルランド、ロシア、カザフスタンの各市場において、Climate Action 100+により選定された温室効果ガス排出量の多い企業を対象に環境ポリシーを導入しており、そのポリシーでは、気候リスクを適切に開示しておらず、温室効果ガスの直接排出量の多くの部分について、定量的な削減目標を持っていない場合、取締役の選任で反対を推奨するとされているが、本改定案①は、かかる基準をより明確化するとともに、適用される市場の範囲を日本を含む全市場に拡大するものと考えられる。

 サステナビリティに関する取組みや開示の強化を図る動きは、近年、世界的に広がりを見せているところ、日本においても、たとえば2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という。)において、上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきであるとされ、特に気候変動リスク情報については、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスクおよび収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、TCFDまたは同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めることが求められることとなった(補充原則3-1③)。本改定案①もこのような動きに沿うものと評価できる。

 日本におけるサステナビリティに関する開示については、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループが2022年6月13日付けで公表した報告書「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告-中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて-」においても有価証券報告書にTCFDのフレームワークの構成要素に基づく開示を行う記載欄を新設すべきことが記載されるなど、今後も議論が行われることが想定されるため、企業においては、本改定案①を含め今後の動向を注視しておくと良いだろう。

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(まつはし・しょう)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2015年中央大学法学部卒業。2017年慶應義塾大学法科大学院修了。2018年弁護士登録。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

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1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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