◆SH4194◆新規分野で企業から信頼されている司法修習60期代のリーガルアドバイザーは誰か? 第3回 染谷隆明弁護士インタビュー 西田章(2022/11/10)

新規分野で企業から信頼されている司法修習60期代のリーガルアドバイザーは誰か?
第3回 染谷隆明弁護士インタビュー

池田・染谷法律事務所
弁護士 染 谷 隆 明

聞き手 西 田   章

 

 2022年は、弁護士業界において「ブティック型」という言葉が特に注目を集めた年だった。5つの法律事務所(アジア法務のAsiaWise、独禁法・消費者法の池田・染谷、知的財産法のイノベンティア、ファイナンスのケイネックス、M&A・スタートアップのサウスゲイト)が合同で8月に実施したインターンシップは学生や司法試験受験生から幅広い注目を集めた(その取組みは日本経済新聞にも取り上げられるほどに反響を呼び、インターンシップに参加できなかった方々との間でも情報共有を目指す無料オンラインイベント(「これからの時代に求められる企業法務弁護士のキャリアと働き方」11月11日(金)18時〜)が予定されている。)。

 「ブティック型」というのは、「総合型」に対比する概念である。伝統的には、企業法務系事務所は「クライアント企業との間で顧問契約を締結して、月々の定額顧問料をもらって法務全般についてのアドバイスをすると共に、別途、株主総会の指導や紛争案件の代理もワンストップで対応する」という「総合型」が理想に置かれていた。しかし、業務の種類としても、M&Aやファイナンス等の同種案件の取扱い経験が重視されるトランザクション業務や、不祥事調査のような「既存業務からの中立性」が求められる業務が増えてくると共に、クライアント企業においても、弁護士資格を有する法務部員がジェネラルなコーポレート案件に対応できる体制を整えようとする先も増えてきて、(クライアント企業の法律問題を一手に引き受けることを目指さずに)「特定の法分野における高度の専門性」を追求する「ブティック型」の存在感が増してきている。

 合同インターンシップを主催した法律事務所のひとつ、池田・染谷のネームパートナーである染谷隆明弁護士は、司法修習(63期)で終えてから12年を経た現在、大企業グループを含む多数のクライアントから、消費者法分野での難易度の高い法律問題に解決策を見出すための専門家として信頼を集めている。弁護士の専門化については「所属する法律事務所の先輩弁護士から同一法分野の仕事を繰り返して下請けすることで、当該法分野の専門性を段々に磨いていく」という修行スタイルが一般的と思われていたところ、染谷弁護士は、それとはまったく異なる経歴を辿ることで、現在の専門性を確立されている。今回のインタビューでは、染谷弁護士より、IT企業への転職や消費者庁で任期付任用の公務員として働かれた経緯に遡って、そのキャリアを振り返って語っていただくことができた。以下、その内容をご紹介させていただきたい(取材日:2022年9月26日。場所:池田・染谷法律事務所会議室)。

 

第1部 広告規制対応

消費者庁が、景品表示法に基づいて、企業に対して措置命令を行うと、テレビのニュースや新聞記事で大きく取り上げられるようになりました。今年の6月の「スシロー」の「うに」のおとり広告も叩かれました。「スシロー」の「うに」については、染谷先生自身も、メディアの取材に応じておられましたね。産経新聞(2022年6月9日付)には「客の需要が企業側の予想を上回ったことで広告の商品が提供できなくなる今回のスシローのようなケースが目立つ」という染谷先生のコメントが引用されています。
消費者庁のリリースによれば、スシローの件は、キャンペーンの途中で、商品が足りなくなる可能性があると判断して、途中の数日間休憩した上で復活させよう、ということをやってしまった事例です。消費者庁の主張は「表示した以上は提供しろ」ときわめてシンプルです。確かに、事業者側が、需要予測をきっちりしなければならないのは当たり前なのですが、それでも、どうしても予測が外れてしまうことはあります。SNSでバズって予想を上回る売れ行きになることもあります。その時にどう対処すればいいのか。スシローの件以降、外食チェーン店からは数多くの相談がありました。
キャンペーン中に在庫が足りなくなってしまったら、どう対処すればいいのでしょうか。
色々なやり方があります。まず、在庫がなくなったら、少なくとも、店舗には「もうなくなりました」ということを伝える表示をしてもらうことが必要となりますし、ウェブサイト上に「この店舗にはこの在庫がない」ことを明確に表示してしまうことも方法として考えられます。モバイルオーダーができるサービスであれば、モバイルオーダーでその店舗を指定した場合に「いま、この商品は在庫切れです」という点がきちんと表示させることなどが考えられます。
弁護士のリーガルアドバイスというよりも、コンサルティングのような仕事ですね。
そうですね。モバイルオーダーは、システムの問題なので、そこをしっかり作り込む対応が求められますし、現場の店舗の表示については、スタッフ教育が重要で、商品がなくなった時に、店舗前に「商品がなくなりました」という表示を出すオペレーションを組めるようにしておくことが求められます。
消費者庁は、オペレーションの実現可能性までは十分に考えてくれなさそうですね。
「おとり広告に関する表示」等の運用基準にも、実務的には受け入れることができない規範も含まれています。店舗毎の販売数量を明記するとか、それができなければ、最も販売数量が少ない店舗の販売数量を表示する、とか。そんな中でも、消費者庁側の執行のトレンドを把握しつつ、クライアント企業のオペレーションの具体的な仕組みを教えてもらいながら、「何をどこまで対応すれば、当局に『処分の必要まではない』と理解してもらえそうか」をクライアントと一緒に考えています。
消費者庁の調査においては、事業者側の言い分を聞いてもらえるものなのでしょうか。素人的には、当局は、一方的に証拠を収集するだけで、弁解を聞くつもりがない、というイメージがあるのですが。
消費者庁の職員も適切な執行をしたいと考えてくれていますから、事業者側から、表示を裏付ける根拠を示したり、現在、こういう取組みをしているところなのでその成果が出るのを待ってほしいといった事情を伝えたりすれば、それを聞いてくれるのが通常です。差し支えない範囲であれば、先方の問題意識を一部開示してもらえることもあります。双方向のコミュニケーションを取れるようには意識しています。
「誠実に対応したら、軽い違反くらいは大目に見てもらえる」という期待を抱けるものなのでしょうか。
消費者庁は、公正取引委員会などと同じく、別に、事業者の監督官庁ではないので、事前に相談したからといって、箸の上げ下ろしまで指導してくれるわけではありません。手持ちの証拠を踏まえて処分の要否を検討しますので、違反に目を瞑ってくれることを期待してはいけません。ただ、当局のリソースにも限りがありますから、社会事情に応じて力を入れて取り組む重点分野のトレンドがあります。そこには、その時々の幹部の問題意識が反映されるでしょうから、それを把握できるように常にウォッチしています。
クライアントが消費者庁の調査を受ける際には、染谷先生は立ち会われるのでしょうか。
はい、できる限り立ち会うように心がけています。
当局側は、弁護士の立会いを嫌がらないでしょうか。
そこは、代理人弁護士であれば当然立ち会うことができると考えています。独禁法の扱いでは既に一般化しているので、公取出身者が多い消費者庁でもご理解いただけています。
消費者庁勤務経験がある弁護士が事業者を代理することは、消費者庁側にとっても、意思疎通がしやすいのでしょうね。消費者庁勤務経験がある弁護士としては、染谷先生の他にも、大江橋法律事務所の古川昌平先生や三浦法律事務所の松田知丈先生らがいらっしゃいますが、これだけの専門家がいれば、量的には「もう十分」という感じでしょうか。
古川先生は消費者庁時代の同僚で、松田先生は私の前任者であり、お二人ともよく知っており、優秀な弁護士でそれぞれ大活躍されています。ただ、もっと広告規制を専門とする弁護士は増えるべきだと考えています。
そんなにニーズはあるのでしょうか。
契約書に関しては、そのレビューを担当する弁護士の数は大勢いらっしゃいますし、AIを用いてそれをサポートするサービスを提供するリーガルテック企業も活躍しています。しかし、広告は、紙媒体だけでなく、インターネット上にも溢れており、数だけで言えば、契約書よりもずっと多く、無数に存在しています。
確かに、広告の制作にはコピーライターやコンサルタントが関与することが多いので、これらコンサルタントが、事実上、広告規制についてもアドバイスしてしまっている事例もありそうですね。
実際、「コンサルタントのアドバイスに従って広告していたところ、消費者庁の調査を受けてしまった」というご相談を受けることもあります。これは、きちんと広告を扱える数の専門家を提供できていない弁護士の側の課題でもあると思っています。

第2部 消費者法とIT業界

染谷先生が景品表示法を専門とされているのは、消費者庁で任期付きで勤務されていたご経歴からよく分かるのですが、資金決済法なども専門とされているのですね。資金決済法は、金融庁が所管しているので、ファイナンスロイヤーの縄張りかと思っていました。
消費者法とは消費者が関係する法律全てを指すのであって、消費者庁所管法令だけが消費者法というわけではありません。消費者法は、BtoCビジネス法と言い換えても良いと思います。資金決済法は、資金決済に関するサービスの利用者を保護するための法律なので、消費者保護法の重要な一つだと位置付けています。
景品表示法の立案を担当した経験は、改正を担当した条文に限るものではなく、消費者保護に関する法律全般に対する解釈の専門性を高めることに役立ったのでしょうか。
改正法案を提出するために内閣法制局の審査を受けたのは、法律家としてすごく勉強になりました。日本の法体系に適合するように景品表示法を改正する、という意味でもそうですし、条文を起案するに際しては、法律を丁寧に読んで、条文に用いられている言葉をひとつひとつ厳格に意味を解釈する訓練を積むことができました。
消費者庁では、最初に課長補佐として勤務された消費者制度課・課徴金制度検討室で立案担当をされたのですね。
はい、消費者制度課で景品表示法に課徴金制度を導入する法改正を担当して、異動先の表示対策課で、改正法の施行準備のために施行令や施行規則の立案を担当しました。
法改正は、森まさこ先生が消費者担当の大臣だった頃に実現されたのですね。
森先生は、弁護士としてニューヨークに留学されて、違法収益を剥奪する「ディスゴージメント」の制度を研究されて、その後も金融庁の職員時代にもアメリカとイギリスに調査に行かれていたので、強いリーダーシップを持って、日本において、消費者被害を減らすための制度の実現に熱心に取り組まれていました。
優れた政治家や役人の仕事ぶりを側で見ることができるのも、任期付で公務員になることの特権ですよね。
はい、森大臣を筆頭に、当時、審議官だった菅久修一さん(その後に、公正取引委員会の事務総長を経て、現在は、ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)のシニア・コンサルタント)は、政府内の調整で優れた指揮を執ってくださいましたし、当時、参事官だった黒田岳士さん(現在は、消費者庁の次長)も、議員の先生方に景表法改正の必要性を訴えて回ってくださったおかげで、衆議院解散の2日前に法案を成立させてくださいました。
景品表示法改正法が成立した2014年11月は、当時の安倍首相が、消費税10%への引上げの延期を表明して衆議院を解散させた時期ですね。解散風が吹くと、国会議員は地元に戻って選挙活動をしたくなってしまう傾向がありますよね(笑)。
2014年の臨時国会では、女性活躍推進法案のような重要法案ですら成立に至らなかったところ、消費者庁の幹部のみなさんが、「景品表示法の改正は、国民のための法改正である」ということを説明してくださった熱意が国会議員の先生方にも通じたのだと思います。
課長補佐だった染谷先生もレクをご担当されたのですか。
当時の消費者庁は人が足りなかったので、課長補佐の自分でも、国会議員の先生方、大臣、副大臣、政務官、消費者庁長官等への説明に駆り出されていました。
法律事務所で弁護士として、法律の専門家だけを相手として働くのとは違う能力が求められそうですね。
その通りです。図らずも「法律の専門家でない方にも、いかにわかりやすく説明するか」という訓練を実地で受けることができました。それは、現在の弁護士業務におけるクライアントとのコミュニケーションにも活かされていると思います。
染谷先生は、消費者法と共に、IT業界に関連する法律もご専門とされていますよね。昨年(2021年)は、「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案」に関して、参議院の委員会にも参考人として呼ばれていました。
消費者問題に詳しいとして著名な、日本共産党の大門みきし先生が、消費者委員会の事務局の人事や、同時に審議されていた特定商取引法の書面交付の電子化に関する批判をなされていた頃だったので、参考人の私に対しても、それらに関連するご質問をいただきました。法律論では回答しづらい質問ではありましたが、良い経験をさせていただきました。
IT分野の知見は、カカクコム時代に培われたものなのでしょうか。
私が入社した頃のカカクコムは、丁度、「価格コム、食べログに続く第三の柱を作ろう」とかけ声の下に、新規事業の創出に熱心な時期でした。私は、自分の座席もないのに、新規事業準備室に入り浸って、勝手に新規事業のサポートをやっていました(笑)。おかげで、新規事業支援の経験が蓄積できました。
マネーフォワードに出向されたこともあるのですね。これはフルタイムですか。
マネーフォワードには、週に数日だけ出社していました。自分用のセキュリティカードを作っていただくためには、顧問契約よりも、雇用契約に基づく従業員として働く方が手続的にスムースでした。
マネーフォワードの勤務経験もあって、染谷先生はフィンテック分野もご専門とされているのですね。
平成29年(2017年)に銀行法の改正が成立しました。それまで、家計簿アプリ等を提供するフィンテック企業は、顧客から、金融機関のパスワードを預かって顧客に代わって金融機関にアクセスする、いわゆるスクレイピング方式を採用していたのですが、これには「有象無象のフィンテック企業にパスワードを預けていいのか?」とか、金融機関側からしても「フィンテック企業が顧客に成り代わってしてくるのは不正アクセスではないか?」といった問題が指摘されていました。そこで、フィンテック企業と金融機関の間でAPI契約を締結して安全にシステムを接続する仕組みを作るために銀行法が改正されました。この法改正への対応もマネーフォワードでの業務のひとつでした。
消費者庁での「官」側でのルールメイキングの経験だけでなく、民間事業者側からも法改正対応をされていたのですね。
マネーフォーワードには、瀧俊雄さんというフィンテック分野のパブリックアフェアーズで著名な方がいらっしゃるのですが、その瀧さんの考え方を聞きながら仕事をすることができたので、とても良い経験になりました。
国内の電子商取引のプラットフォーマーの2社からも、染谷先生にお世話になっていると聞きました。
例えば、モール型のECサイトでは、様々な商品が取引されていますので、表示との関係でも色々な論点が出てくるので、それをどこまで突き詰めて検討するかは悩ましいところです。
例えば、どういう問題があるのでしょうか。
例えば、「体温計」は、薬機法上の「医療機器」ですが、消費者がECサイトで検索すると、非接触式の「温度計」も検索結果に含まれて表示されることがあります。この場合に、「体温計」の検索結果において、医療機器でない「温度計」をあたかも医療機器として表示し薬機法上の問題はないか。表示の主体は出店者なのか、モール事業者なのか、なども論点となります。
なるほど、表示の問題は奥深いですね。現在の業務でも、クライアントは、IT業界がメインなのでしょうか。
確かにIT業界のお客様は多いですが、食品メーカーもあれば、電機メーカーもあれば、ほぼすべての業界の方々がいらっしゃると思います。
当局対応のコンサルティング的な業務で忙しくされているので、裁判所に行かれることはないですよね。
裁判所にも行っていますよ。例えば、通信サービスの通信障害があった場合に、消費者がサービスを利用できなかったことを理由とする損害賠償を請求してきた事件の被告企業側の代理人とか、オンラインゲームのガチャの表示に問題があるとして利用者から訴えられた訴訟での被告企業側の代理人を担当しています。
一件一件の訴額は小さくとも、万が一、企業側の損害賠償責任が認められてしまうようなことがあれば、背後に同様の利害を有する多数の消費者が控えていそうな案件ですね。
その通りです。ですから、安易な和解もできませんし、企業側の主張を裁判所に理解してもらえるように最大限の主張・立証を尽くしています。
訴訟代理人業務はチームで対応されているのでしょうか。
以前は、ひとりで代理していたのですが、さすがに手が回らなくなって、現在は、アソシエイトを入れて一緒にやっています。
でも、コンサルティング的業務と、訴訟代理人業務は、スピード感が異なるので、並行して両方の種類の案件を担当するのは大変じゃないですか。
そうですね、コンサルティング業務では「速攻で回答を返す」のに対して、訴訟代理人業務は熟考して起案しなければならないので、時間管理は大変ですね。
訴訟はやらない、という仕事スタイルにはならないのでしょうか。
私は、もともとが街弁として、「金返せ」とか「離婚せよ」とか「保証債務を履行せよ」とか「建物を収去して土地を明け渡せ」みたいな訴訟をやっていたので、訴訟自体が結構好きなんです。

第3部 キャリア

広告に関する最先端の専門性を備えつつ、これだけ幅広い業務範囲をカバーする染谷先生のキャリアがどのように形成されてきたのか、とても興味があります。今のお話だと、新卒で入所された今村記念法律事務所は、一般民事も扱われている事務所だったのですね。
そうですね。ロースクール時代の教授から「一緒にやろう」とお誘いをいただけたのがきっかけでした。街弁として幅広い仕事をさせていただきました。
当初から、企業法務とかインハウスの仕事に興味があったわけではないのですか。
会社員として法務を担当することへの興味は、実は、学生時代に芽生えたものです。司法試験の選択科目が倒産法だった私は、法律雑誌で破産法改正についての座談会を読んだことがありました。その座談会には、伊藤眞教授とか松下淳一教授といった法学者と共に、実務界から、三井住友銀行で当時、法務部長を務められていた三上徹さんが参加されていました。一流の法学者に臆することなく、実務ではこういうことが問題になっている、と主張されている姿を見て、「会社の中に入り込んで法務を担当するのも面白そう」と感じました。
それで、街弁的な業務を一通り終えたところで、当初からの関心であるインハウスに転身されたのですね。転職先としてカカクコムを選ばれた理由は何だったのでしょうか。
当時、私は独身で、神保町・九段下エリアに住んでおり、神楽坂も近いので、毎日、外食ばかりしていました。その時に使っていたアプリが「食べログ」でした。
消費者の一人として「食べログ」を愛用されていたのですね。
そうです。最初の法律事務所での仕事が落ち着いた頃(2012年)、「食べログ」で、やらせ投稿がなされている、という「ステマ」が問題となって炎上し、株価も下落しました。そのニュースを見て、「会社の中で法務の仕事をしてみたい」という夢を思い出しました。
そこで社内弁護士の中途採用も行われたのですね。
はい、カカクコムが弁護士資格者を募集していました。もっとも、ステマっぽい口コミを点数に反映させない仕組みは、アルゴリズムの問題であり、弁護士のみが対策できる問題ではないのですが(笑)、自分がすごく好きなサービスだったし、ITをやってみたかったのでカカクコムに入社しました。
そこで、先ほどもお話にあったとおり、新規事業等を担当されたのですね。
カカクコムは、とても自由な会社だったので、新規事業だけでなく、「食べログ」も、予防法務も、戦略的なことも、M&Aも、様々な案件を担当させていただきました。
カカクコムでは、外部法律事務所に依頼するクライアント側の立場にいたわけですね。
はい、カカクコムで「外部弁護士を見る目」が養われた気がします。
カカクコムでは、複数の外部弁護士を、案件毎に使い分けていたのですね。
会社としても法務にしっかり予算を割いてくれていたので、ほとんどリーガルフィーを気にすることなく、様々な一流の弁護士のアドバイスを利用することができました。
お手本にしたいと思えるような弁護士には出会いましたか。
私がカカクコム時代に最も信頼していた外部弁護士をひとりだけ挙げるとすれば、もうお亡くなりになってしまったのですが、潮見坂綜合法律事務所の田淵智久弁護士ですね。私にとってのロールモデルとなっている先生です。
まだ50歳代だったと思いますが、2016年3月1日に急逝されてしまいました。
パートナーでお忙しいはずなのに、クライアントである私からの質問に対して、毎回即座に、要点だけをパッと回答してくださいました。
メールですか。電話ですか。
私が田淵先生にメールをすると、すぐに電話が来て、その電話で相談を解決していく、という感じでした。天性的に勘が鋭くて、「お客さんが何を欲しているか?」を瞬時に察知する能力がとても高く、「それが欲しかった!」というコメントをスパッと提供してくださいました。
田淵先生も素晴らしいですが、田淵先生の口頭でのコメントを受け取った染谷先生が、自分で理解して社内を説得してくれる、という前提があったから即時の解決につながっていたような気もします。
そう言われてみると、カカクコムでは、平社員だったにも関わらず、「好きに仕事していいよ」と言ってもらえて、当時の上司に自由に仕事ができるだけの権限を与えてもらえていました。これはとてもありがたかったですね。
カカクコムでの仕事には満足されていたのですね。それでは、消費者庁に行かれるきっかけは何だったのでしょうか。
IT業界は、ビジネスが先行して、ルールが追い付いていないので、ルール作りに携わりたいと思ったのが最大の理由です。自分がいる業界、自分がいる会社が仕事をしやすい環境を、ステークホルダーの納得も得ながら作っていく、ということをしてみたいと思いました。
2014年当時にルールメイキングの重要性を既に感じておられたのですね。何かその思いを顕在化させるような出来事があったのでしょうか。

 

続きはこちらから(フリー会員の方もご覧になれます)

過去のインタビューはこちらから

 

(そめや・たかあき)

2010年弁護士登録。2012〜2014年株式会社カカクコム法務部にてIT関連法実務に従事する。2014年~2016年消費者庁表示対策課に勤務し、景品表示法に課徴金制度を導入する改正法の立案を行う。2018年10月に景品表示法を中心に取り扱う池田・染谷法律事務所を設立。
消費者庁当局の経験を活かした広告規制を遵守しつつ、利益を最大化する広告戦略やユーザの囲い込みを有効に行うポイント・キャンペーン戦略などのマーケティング助言の他、消費者庁調査対応等の危機管理を最も得意とする。また、大手IT企業への出向経験を活かし、IT分野におけるスタートアップ、IPO、上場後の各フェーズにおける豊富な法務戦略の助言を日常的に行い、新規ビジネスと法規制が交錯する分野の豊富な経験も有する。

 

(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。
1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。
2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。
著書:『新・弁護士の就職と転職――キャリアガイダンス72講』(商事法務、2020)、『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)




メールで情報をお届けします
(毎週火曜日・金曜日)